改訂新版 世界大百科事典 「御物石器」の意味・わかりやすい解説
御物石器 (ぎょぶつせっき)
中央からややかたよったところに大きなくびれ部のある,長さ20~40cmの長大な磨製石器。形態や文様から〈枕石〉〈猪頭形石棒〉とも呼ばれたが,明治時代に皇室に献上され〈帝室御物〉になったことから,この名称が用いられるようになった。安山岩,砂岩,黒色粘板岩を敲打したうえで,磨いて作っているが,磨きが不十分なものも多い。側面に三叉状連結文やそれに組み合う渦巻文,E字状文などを描くもの,前者の文様を単独で用いたものや,文様の無いものなどがある。赤色顔料を塗彩した例や,安置された状態で出土した例などがあり,また,1遺跡から1点しか出土しないことが多く,非実用石器と考えられている。富山県,岐阜県の庄川,神通川,益田川,飛驒川流域に集中して出土するが,東は新潟県,西は北九州まで分布している。独鈷石や石冠とならんで,縄文時代後・晩期の非実用的磨製石器の代表である。
執筆者:泉 拓良
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報