改訂新版 世界大百科事典 「石冠」の意味・わかりやすい解説
石冠 (せっかん)
縄文時代の石器で,〈石冠〉と〈北海道式石冠〉との2群に分かれる。(1)石冠は砂岩質の軟質な石材をていねいに加工した,長さ5~20cmの磨製石器。形態でさらに二大別できる。半円形や方形の台状部に半球状や斧形の頭部がつくものは,文様を陰刻した例が多く,底面がへこむ特徴がある。縄文晩期の中部地方を中心に近畿地方から東北地方に分布し,これを模した土製品はおもに東北地方に分布する。土製品の存在から,儀器として用いたとされる。ほかに台状部と頭部の区別がなく,側面が半円形で断面が三角形をなす石冠がある。底面が平たんでかつ文様をもつ例が少なく,磨石(すりいし)の一種とも,その儀器化したものとも考えられ,出現は中期にさかのぼるという。分布は中部地方が中心である。(2)北海道式石冠は形態が石冠に似るものの,石英粗面岩など硬質の石材で粗雑に作られた縄文時代早・前期の石器である。底面に敲打痕や磨滅痕があり,石杵のような用途をもつ。
執筆者:泉 拓良
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報