仏像や祖師像に付着した塵埃をぬぐい清めること,またその法要をいう。京都市嵯峨の清凉寺(釈迦堂)のそれが歴史的にも名高い。毎年4月19日(もと3月)に,香水(こうずい)に浸した白木綿で本尊の釈迦像をぬぐい,これを信者にあたえる。この白木綿を死後の経帷子にすると,往生できるという。その起源は,寺伝によれば,安嘉門院が本尊のお告げで牛に転生した母のことを知り,その牛を飼っていたが,3月19日にその牛が死んだので,赤栴檀(せんだん)の本尊をぬぐって香りのついた布を牛にかぶせたところ,母は往生できた。これより,本尊のにおいを布にうつして衆生を救う法要が営まれるようになったという。《二水記》など中世の文献にも御身拭参詣の記事が出ている。寺院の年中行事として行われる場合,時期的には歳末が多い。知恩院では,12月25日に多くの修行僧が見まもるなか,御影堂の法然像が住職によって払拭され,その布が篤信者に分けあたえられる。
執筆者:伊藤 唯真
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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