古代以来,青苧(あおそ)等の麻苧を原料としてつくられた衣料。すでに律令制時代に貢納・自給のため全国的に生産されていた。平安末期から鎌倉時代には,残存史料によると青苧生産地の甲斐(小井河荘),常陸(村田荘),上野(土井荘),備前(長田荘),豊前(糸田荘),薩摩(入来院)等の諸荘園から公事物として白布が貢納されている。鎌倉末期以降になると青苧等麻布原料の商品化によって,それらが京都,奈良,天王寺等の都市麻織業者に供給されて,製品白布はこれらの都市の白布座・布座で売られるようになる。文明~文亀年間(1469-1504)には将軍足利義政の娘南御所を本所とする白布座が棚公事を納めていたが,南御所が住んでいた宝鏡寺は棚公事徴収代官の役割をつとめていた。京都における白布の取引はこの白布座だけでなく駕輿丁(かよちよう)や他の商人たちもかかわっており,営業税の公事納入をめぐって白布座と駕輿丁が激しく争っている。このほか宇治や奈良のさらしはしだいに有名になり,近江高宮産の白布も都の内外で評価をうるようになった。
執筆者:佐々木 銀弥
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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