家庭医学館 の解説
きゅうせいさんざいせいのうせきずいえん【急性散在性脳脊髄炎(アデム) Acute Disseminated Encephalomyelitis(ADEM)】
静脈(じょうみゃく)周囲の炎症と脱髄性病変(だつずいせいびょうへん)(「脱髄疾患とは」)が脳・脊髄の白質(はくしつ)内に多数形成されるまれな病気で、たいていは、予防接種を受けた後や、感染症にかかった後におこります。
[原因]
神経に障害をおこしやすい予防接種や感染症の後におこることがほとんどです。
狂犬病(きょうけんびょう)、インフルエンザ、ポリオ、破傷風(はしょうふう)の予防接種を受けた後や、はしか、水ぼうそう、風疹(ふうしん)、おたふくかぜ、伝染性単核症(でんせんせいたんかくしょう)などにかかった後に発症します。これらの予防接種や感染症に対するアレルギー反応が病気の本態と考えられています。
原因のわからないものもあります。
[症状]
予防接種を受けたり、感染症にかかったりした後の1~2週間後に、後述のような神経症状が現われてきます。
原因不明の場合も、発熱、頭重(ずじゅう)、全身倦怠(ぜんしんけんたい)、嘔吐(おうと)などの症状がおこって1~2日後に神経症状が現われてきます。
●神経症状
現われてくる神経症状の数や重症度は、人によってさまざまです。頭痛・不眠・不穏(ふおん)状態(大声をあげて、暴れたりする)・全身けいれん・意識障害などの重い脳症を示す人、半身不随(はんしんふずい)・同名性半盲(どうめいせいはんもう)(視野の横半分が見えない)・言語障害などの脳の部分的な障害を示す人、運動失調(うんどうしっちょう)(手足の動きがぎこちない)・歩行障害・知覚障害(しびれ)・大小便の排泄困難(はいせつこんなん)や失禁(しっきん)などの小脳(しょうのう)や脊髄(せきずい)の障害を示す人などです。
たいていは、数週間後に症状がおさまり、回復しますが、まれに症状が再発したり、症状が重くなって死亡したりすることがあります。
[検査と診断]
血液と髄液(ずいえき)を採取し、ウイルスの抗体価(こうたいか)を調べる免疫学(めんえきがく)的検査などを綿密に行なって診断します。
[治療]
音や光による刺激を避け、絶対安静が必要ですし、全身状態を改善させる集中治療が必要なので、入院します。
副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン薬をはじめ、必要とする各種の薬剤を使用します。
回復期に入ったら、ビタミンの豊富な食事をとり、リハビリテーションで運動障害の改善をめざします。