デング熱(読み)デングねつ(英語表記)dengue fever

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「デング熱」の意味・わかりやすい解説

デング熱
デングねつ
dengue fever; breakbone fever

(蚊)が媒介するデングウイルスによる感染症感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律で 4類感染症と定義される。熱帯地方や亜熱帯地方,特に東南アジア,南アジア,中南米諸国に多く発生する。3~7日の潜伏期ののち急激に発熱し,頭痛,眼窩痛,関節痛,筋肉痛,皮疹を示す。7~10日程度の経過で回復することが多く,致死率はきわめて低いが,まれに重篤化して,血漿漏出と出血を症状とするデング出血熱となる。病原ウイルスネッタイシマカヒトスジシマカなどのカが媒介する。1907年にアメリカ合衆国の軍医パーシー・アシュバーンとチャールズ・クレイグがカによって感染することをフィリピンで確認して報告した。ウイルスは 4種の血清型に分類される。罹患後,短期間は免疫があるが,別の血清型に対する免疫は数ヵ月で消失する。2014年現在ワクチンや治療薬はなく,治療は対症療法。日本でも 1942~45年に大流行した。近年では,海外の渡航先で感染し日本国内で発症する例が年間 200人前後報告されているが,2014年には国内感染による症例が確認され,約 160人が感染したとみられた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「デング熱」の意味・わかりやすい解説

デング熱
でんぐねつ
dengue fever

デングウイルスによる急性熱性疾患で、ネッタイシマカまたはヒトスジシマカによって媒介される。デングウイルスはアルボウイルスB群(フラビウイルス科フラビウイルス属)に属し、直径25~40ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)の球状粒子で、中心に1本鎖のRNAリボ核酸)をもつ。臨床的には古典型と出血型に分けられる。古典型の潜伏期は4~8日で、急激に発病し、悪寒とともに全身の筋肉および関節痛を訴え、39~40℃の高熱がみられる。このとき初期発疹(ほっしん)をみることもある。発病後3日目には一時症状が軽快し、発病後5、6日目にふたたび高熱が現れ、デング熱発疹が出現する。出血型は顕著な出血性素因およびショック症状を招来することに特徴がある。発病および初期の経過は古典型と差異はないが、発病数日後に皮膚に出血斑(はん)が生ずるほか、鼻出血吐血をみることもある。デング熱の分布は東南アジアと中央および南アメリカで、日本では1942年(昭和17)の長崎に始まる大流行が有名で、44年まで毎年流行がみられた。

[松本慶蔵・山本真志]

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