風疹ウイルスが引き起こす感染症。せきやくしゃみによって
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トガウイルス科に属する風疹ウイルスによる急性感染症で、通常は軽症ですが、まれに血小板減少性
発疹が現れる前後約1週間の患者さんの
風疹ウイルスに感染後、14~21日の潜伏期ののち、発熱とともに全身に淡い発疹が現れます。通常3日程度で消失し、麻疹(はしか)のように発疹のあとが長く残ることはありません。一般に「三日ばしか」とも呼ばれています。
発熱は麻疹のように高熱が続くことは少なく、微熱程度で終わることも多くあります。また耳後部、
通常は数日で治る病気ですが、まれに血小板減少性紫斑病(3~5千人に1人)、急性脳炎(4~6千人に1人)といった合併症を併発することがあります。また、感染しても症状を現さない人が約15%存在し、発熱、発疹、リンパ節
妊娠初期の女性が風疹にかかると、出生児が先天性風疹症候群(CRS)になることがあります。妊娠2カ月以内の女性が風疹にかかると、
妊娠3~5カ月に感染した場合でも難聴が多くみられます。その他、子宮内での発育が遅い、
2008年1月1日から風疹は、CRSとともに全数報告の感染症となり、診断したすべての医師が最寄りの保健所に1週間以内に届け出ることが義務づけられました。
特異的な治療法はなく、対症的に治療します。発熱、関節炎などに対しては解熱鎮痛薬を用います。
予防として弱毒生ワクチンが実用化され、広く使われていますが、先進国ではMMR(麻疹・おたふくかぜ・風疹混合)ワクチンとして使用している国がほとんどです。日本では、2006年からMR(麻疹・風疹混合)ワクチンが広く使用されるようになり、2006年6月からは、1歳児と小学校入学前1年間の幼児を対象とした2回接種制度が始まっています。
CRSに対するウイルス特異的な治療法はなく、女性は妊娠する前にワクチンによって風疹に対する免疫を獲得すること、社会全体で風疹ワクチンの接種率を上げることで風疹の流行そのものを抑制し、妊婦が風疹ウイルスに
2008年度から5年間の時限措置として、10代の者への免疫強化を目的に、中学1年生と高校3年生相当年齢の者に対する2回目の予防接種が、予防接種法に基づく定期接種に導入されました。
かかりつけの小児科、成人の場合は内科あるいは皮膚科を受診します。学校保健安全法では第二種感染症に定められていて、紅斑性の発疹が消えるまで登校・登園停止となっています。まわりにいる妊娠している女性をCRSから守るために、可能な限り接触しないよう努力が必要です。
多屋 馨子
発疹、リンパ節
風疹ウイルスの飛沫感染により発病し、好発年齢は5~15歳ですが、成人になってからかかることもあります。3~10年の間隔で流行し、春から初夏によくみられます。1999年以降、流行はなくなり季節性もなくなってきました。
潜伏期は14~21日(16~18日間が多い)です。経過を図44に示します。初発症状は発疹で、その性状は桃紅色の
風疹ではリンパ節がはれるのが有名ですが、とくに
合併症としては関節炎があり、発疹が消えてから発生し、小児より成人、しかも女性に多いといわれています。
末梢血の白血球数は減る傾向があります。抗体検査で診断を確定します。
風疹ウイルスに効く薬はありません。症状に応じた対症療法になります。予防には風疹生ワクチンを用い、予防接種法の定期接種第一類として1歳以降に接種を受けます。
現在、風疹ワクチンは麻疹・風疹混合(MR)ワクチンとして接種、第1期(1歳児)と第2期(小学校入学前年度の1年間にあたる子)に計2回接種します。これは1回の接種では免疫が長く続かないため、2回目を接種し免疫を強め、成人になってから麻疹や風疹にかからないようにするためです。
2008年4月1日から5年間の期限付きで、麻疹と風疹の予防接種対象が、第3期(中学1年生相当世代)、第4期(高校3年生相当世代)にも拡大され、接種機会を逸し1回しか接種されていない子も2回接種が可能になります。
風疹ワクチンは風疹の罹患や流行防止を目的としていますが、妊婦が先天性風疹症候群の子を産まないようにすることを最大目標にしています。妊婦が風疹ワクチンの接種を受けてはならないことはいうまでもありませんが、成人女性が風疹ワクチンの接種を受ける場合には、接種後2カ月間は確実に避妊することが大切です。
幼稚園や学校を休む必要があります。発疹がなくなることが登園、登校の目安になります。
浅野 喜造
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
(1)Christine M Hay, MD. Rubella. UpToDate 10.3 https://www.uptodate.com
(2)Anne Gershon. RUBELLA (GERMAN MEASLES). Harrison's Principles of Internal Medicine 15th Ed. McGraw-Hill.
(3)Cheffins T, Chan A, Keane RJ, et al. The impact of rubella immunisation on the incidence of rubella, congenital rubella syndrome and rubella-related terminations of pregnancy in South Australia. Br J ObstetGynaecol. 1998;105:998-1004.
出典 法研「EBM 正しい治療がわかる本」EBM 正しい治療がわかる本について 情報
麻疹(はしか)に似た発疹(ほっしん)ができる急性伝染病で、ドイツの医師により初めて記載されたので「ドイツはしか」ともいい、また症状が軽くて2~3日で発疹が消えるところから「三日はしか」ともよばれる。病原体はウイルスの一種で、飛沫(ひまつ)感染するが伝染力は麻疹ほど強くない。罹患(りかん)すれば終生免疫が得られる。冬から春にかけ主として小児の間に流行するが、成人では重症化傾向がみられ、とくに妊娠初期の女性が罹患すると、先天性風疹症候群の子供を出産する危険性があるので、臨床上では小児よりもむしろ成人に問題点がある疾患といえる。
風疹は3~10年の間隔で周期的に流行し、潜伏期間は2~3週である。軽度の発熱とともに、小さい斑(はん)状の発疹が顔をはじめ全身にかなり密に現れるが、麻疹よりは小さく、3日くらいで皮もむけずに消えて色素沈着も残さない。熱は38~39℃にもなるがすぐ下がり、2~3日微熱が続くことが多い。咳(せき)や目やになどのカタル症状もごく軽い。全身のリンパ節が腫脹(しゅちょう)するが、とくに後頭部および耳後部や頸(けい)部の腫脹が特徴的で、軽い圧痛がある。血液像としては白血球の減少、異型リンパ球ないし形質細胞の増加がみられる。成人の場合には合併症として脳炎や血小板減少性紫斑(しはん)病などがみられるが、一般に予後はよい。また、成人女子の場合は発赤腫脹を伴う関節炎をしばしばおこす。
なお、風疹患者の病原体排出期間は発疹の発現前後それぞれ約1週間とみなされ、この間は感染の可能性があるので留意する。
風疹は軽症で特別な治療をしなくても全治するため、通常は安静と対症療法しか行われないが、他の疾患の感染予防の目的で抗生物質が使われることもある。予防には風疹ウイルスの生(なま)ワクチン接種が行われる。日本では1977年(昭和52)以来、先天性異常の発生防止を主目的として、妊娠前に免疫をつけるため、女子が13~15歳に達したとき風疹ワクチンの接種を受けることに決められていた。その後、89年(平成1)4月からは、生後12~72か月までの間の麻疹ワクチン定期接種時に、麻疹、風疹、おたふくかぜ混合ワクチン(MMRワクチン)の接種が選択できるようになったが、副反応として無菌性髄膜炎が多発したため、93年4月にはMMRワクチンは中止され、それぞれのワクチンの単独接種となった。95年4月からは、風疹の流行自体を防ぐために、生後12~90か月未満の男女に風疹ワクチンが接種されることとなっている。
[柳下徳雄]
風疹ウイルスの垂直感染によって母親から胎盤を通じて胎芽にウイルスが伝播(でんぱ)し、胎児の各器官が形成される胎芽期の細胞分裂が妨げられて、白内障をはじめ、動脈管開存症などの心疾患や難聴など多彩な先天異常が新生児に残るものをいい、CRS(congenital rubella syndrome)と略称される。1941年にオーストラリアの眼科医グレッグNorman M. Gregg(1892―1966)によって発見・記載された。先天異常の発生頻度は妊婦の風疹初感染の時期によって異なり、だいたい妊娠第4か月以降には低下し、初期ほど高くなっているが、着床以前の妊娠第1か月前半(最終月経後14日間)の頻度は少ない。妊娠第2か月間に罹患すると白内障や心疾患、妊娠第3か月以降では聴力障害や網膜症がみられ、白内障や心疾患には難聴などを高率に合併し、発育・発達障害も伴いやすい。障害の頻度としては、難聴がもっとも多くみられる。
なお、生後1週間に低出生体重、血小板減少性紫斑、肝脾腫(ひしゅ)、肝炎、溶血性貧血、泉門膨隆など多彩な症状がみられ、先天異常の永久的障害に合併することが多い。これらの多彩な症状をまとめて新生児急性先天性風疹とよび、先天異常を主にまとめたCRSと区別することもある。多彩な症状は多くの場合、2週間から2か月で回復するが、血小板減少性紫斑病に先天異常が合併した場合の予後は悪い。
CRSに対する治療としては特別なものはなく、手術の適応のある先天異常には手術を行うほか、難聴には補聴器を用い、難聴教育を必要とする。予後としては生後6か月以内に死亡するものが多く、大部分の死亡は生後1年以内であり、心不全、敗血症、全身衰弱などが死因となる。なお、妊婦の風疹罹患は流産、早産、死産をおこしやすいことでも知られる。
日本では1965年(昭和40)から4~5年間、風疹の全国的な流行があり、とくに沖縄ではCRSが多発して注目されたが、その後しばらく流行がなく、75~77年にふたたび大流行があったものの、このときはCRSの発生がきわめて少なかった。
[山口規容子]
トガウイルス科Togavirusルベラウイルス属Rubellavirusに属する1本鎖RNA(リボ核酸)ウイルスで、エンベロープ(外被)をもつ。球形で直径50~70ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)、ヌクレオカプシド(カプシドに直接取り込まれているウイルスの核酸)の直径は約30ナノメートル、エーテル感受性。ヒトが唯一の自然宿主(しゅくしゅ)(ウイルスの寄生対象となる生物)である。細胞培養で増殖が可能となった。宿主域はヒトの羊膜細胞、ウサギの腎(じん)細胞などで、この部位で発育する。他の細胞培養では細胞変性を示さないことが多い。
風疹ウイルスの証明はウイルスの干渉作用を利用して行われる。すなわち、ミドリザルの腎細胞に風疹ウイルスを接種し、その後7~11日経過してからエコーウイルスⅡを接種すると、エコーウイルスⅡによる細胞変性が阻止される。
[曽根田正己]
(石川れい子 ライター / 2013年)
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俗に〈三日ばしか〉とも呼ばれる。風疹ウイルスの感染によって起こる軽い発疹性伝染病であるが,妊娠初期の婦人が罹患すると,白内障,先天性心疾患,小頭症など各種の奇形や病変(先天性風疹症候群)をもったいわゆる〈先天性風疹児〉が高率に生まれることが知られてから,重要な伝染病としてクローズアップされた。流行は3~10年の間隔でみられ,春に発生の山があり,患者は小学生が多い。伝播は飛沫感染で,伝染期間は,発疹出現4~5日前から,その後1週間ほどである。不顕性感染率は約30%とかなり高い。学校伝染病第2類に規定されている。潜伏期は2~3週で,軽い発熱,麻疹(はしか)に比べ小さい鮮紅色斑点状の発疹,後頭部,耳後部などの明らかなリンパ節のはれをおもな臨床症状とする。白血球数は減少する。ごくまれに合併症として脳炎を併発することがある。
風疹生ワクチンが,日本では1977年から妊婦の風疹罹患による先天性風疹児出生の防止を主目的として,中学生女子を対象に定期接種されていたが,1995年以後,生後12ヵ月以降の接種と変更された。しかし妊婦には絶対使用してはならず,またワクチン接種後少なくとも2ヵ月間は避妊が必要である。
執筆者:北山 徹
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(2013-2-12)
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…このような奇形を誘発する因子を催奇形性因子,物質を催奇形性物質と呼んでいる。これらのおもなものには,サリドマイドによるアザラシ肢症(薬剤ないし化学物質)や,原子爆弾症による小頭症(放射線),風疹による先天性心臓奇形(感染症)などがあげられる。さらに,遺伝的要因と環境要因の両者の相互作用によって形成されると考えられる奇形もある。…
…妊婦の風疹罹患のために出生児に現れる種々の障害を総称して先天性風疹症候群といい,母親が不顕性感染の場合でも起こりうる。風疹は風疹ウイルスによって起こり,一般には軽く経過する病気であるが,妊婦が妊娠初期にかかると胎盤を通して胎児に感染し,流産や種々の奇形発生の原因となる。…
※「風疹」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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