イギリスの小説家A.L.ハクスリーの小説。1928年刊。1920年代のイギリス上流社会が舞台。作者の自画像といわれる傍観者的で懐疑的な作家,キリスト教倫理や現代の科学主義に反対して原始の人間性の回復を説く画家,冷笑的なニヒリスト,精神主義を説きながら実際は好色漢の作家,ファシスト,共産主義者,有閑夫人,刹那(せつな)的なフラッパーなど,第1次大戦後の価値観の混乱のなかにうごめく知識人たちの生き方と思想を描いた思想・風俗小説。音楽の対位法になぞらえて構成され,多様な登場人物と主題のバリエーションが巧みに描かれている。A.ジッドの《贋金(にせがね)づくり》と同じく作中の小説家フィリップに創作過程を語らせている点,またD.H.ロレンス,ボードレール,J.M.マリーなどがモデルになっていることでも知られる。
執筆者:鈴木 建三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
イギリスの作家オルダス・ハクスリーの長編小説。1928年刊。作者の代表作であるばかりでなく「絶望の10年間」といわれる1920年代の傑作である。作者の分身である小説家フィリップ・クォールズや、D・H・ローレンスをモデルにした友人ランピオンら五組の家族の退廃した生活を次々と描いて、第一次世界大戦後の知識階級の精神状態を提示したものである。人生の多様性をそのまま、混乱するところなくとらえるために音楽の対位法を応用した点が注目される。また、作中に小説家を登場させ(この点でジッドの『贋金(にせがね)つかい』の影響が指摘される)ノート・ブックを書かせることによって自作を解説させるなど、当時のイギリス小説としては斬新(ざんしん)な手法として注目された。
[瀬尾 裕]
『朱牟田夏雄訳『恋愛対位法』(岩波文庫)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…23年から30年までイタリアに住み,D.H.ロレンスと親しく交際。構成を音楽の形式になぞらえた知的風俗小説《恋愛対位法》(1928)を出版。社会的・政治的緊張の高まった30年代に入ると,テクノクラシーのもとでの管理社会を風刺した逆ユートピア小説《すばらしい新世界》(1932),恒久平和を目ざす倫理的・宗教的立場から傍観を批判する《ガザに盲(めし)いて》(1936),とらわれのない〈無執着〉の倫理を説く評論《目的と手段》(1937)を発表。…
※「恋愛対位法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加