家庭医学館 「慢性収縮性心膜炎」の解説
まんせいしゅうしゅくせいしんまくえん【慢性収縮性心膜炎 Chronic Constrictive Pericarditis】
心膜の炎症が慢性化して心膜が厚くなり、癒着(ゆちゃく)や石灰沈着(せっかいちんちゃく)をおこしてかたくなり、心臓の拡張をさまたげる病気です。
頻度は低く、原因不明のものも多いのですが、急性心膜炎(きゅうせいしんまくえん)(「心膜炎(心嚢炎)」)からおこるものもあり、結核(けっかく)や心臓手術、心筋梗塞(しんきんこうそく)から発症したもの、膠原病(こうげんびょう)が原因になるものが多いといわれます。
また、腎不全(じんふぜん)や、悪性腫瘍(あくせいしゅよう)の転移によって生じることがあります。
心臓の外側の膜が広がらないために、心臓が拡張しにくく、血液が充満されず、血液の拍出量が低下します。
[症状]
心タンポナーデと同様、からだを動かすと呼吸困難が生じたり、肝臓などに血液がうっ滞(たい)してむくんだりします。全身倦怠感(けんたいかん)、動悸(どうき)、めまいなどがみられる場合もあります。ただし、徐々に発症する場合は進行するまで症状を感じないこともあります。
[検査と診断]
問診、視診、聴診のほか、血液検査、胸部X線検査、心臓超音波(心エコー図)検査を行ない、心膜の石灰化や拡張障害がみられれば、高率にこの病気が疑われます。確実に診断するために、くびなどの静脈から心臓にカテーテル(管)を入れ、心臓の中の圧を測定したりします。
[治療]
外科的治療が必要です。全身麻酔をし、開胸して厚くなった心膜を切除する手術です。この心膜切除を行なっても、心臓の筋肉にまで障害がおよんで心不全を合併している場合は、しばらく入院して安静をはかり、塩分の制限、利尿薬(りにょうやく)や強心薬(きょうしんやく)の使用などの内科的治療が必要となります。なお、原因が結核である場合は、抗結核薬も使用されます。