心膜炎(読み)シンマクエン(英語表記)Pericarditis

デジタル大辞泉 「心膜炎」の意味・読み・例文・類語

しんまく‐えん【心膜炎】

外側の心膜の炎症。リウマチ熱結核尿毒症などで合併症として起こることが多い。心外膜炎。心嚢炎しんのうえん。→心内膜炎

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精選版 日本国語大辞典 「心膜炎」の意味・読み・例文・類語

しんまく‐えん【心膜炎】

  1. 〘 名詞 〙 心臓二重に包んでいる心膜におこる炎症。関節リウマチ結核症伝染病、尿毒症などにおこることが多く心臓部の圧迫感、動悸息切れなどの症状がある。

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六訂版 家庭医学大全科 「心膜炎」の解説

心膜炎
しんまくえん
Pericarditis
(子どもの病気)

どんな病気か

 心臓をおおっている心膜に起こる炎症です。細菌やウイルスによる感染症、膠原病(こうげんびょう)リウマチ熱川崎病(かわさきびょう)、心臓手術後などが原因になります。

症状の現れ方

 症状は、胸痛のほか、発熱が多くの場合にみられます。胸痛は体位で変化し、横になると痛みが増し、上半身を起こしている時や前かがみになると痛みが和らぐのが特徴です。赤ちゃんであれば、横にすると機嫌が悪くなります。

 原因のいかんにかかわらず、心膜腔(しんまくくう)に貯留液が大量にたまると心臓が外から圧迫されるため、血圧の低下など重い状態になります。これを心タンポナーデといい、命に関わる病態ですので、早急に貯留液を取り除く必要があります。

検査と診断

 心臓の聴診では心膜の摩擦(まさつ)する音が聞こえ、心電図ではST上昇などの変化、胸部X線写真では心拡大がみられます。心エコー(超音波)では、心膜腔という心臓をおおっているスペースに貯留液がたまっていることで、容易に診断できます。

治療の方法

 細菌性心膜炎は一般的に重症で、心タンポナーデになることがしばしばあります。本症が疑われる場合には貯留液を排出し、その液のなかの細菌培養を行い、抗菌薬を投与します。

 ウイルス性心膜炎は心筋炎と同様、かぜに似た症状、腹部症状などが先行することがあります。心タンポナーデはまれで一般的に症状は軽いですが、重症の場合は心筋炎の合併に注意が必要です。治療は抗炎症薬などの対症療法を行います。

塚野 真也

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家庭医学館 「心膜炎」の解説

しんまくえんしんのうえん【心膜炎(心嚢炎) Pericarditis】

[どんな病気か]
 心臓の外側をおおっている心膜に炎症がおこる病気です。心膜だけではなく、心筋(しんきん)(心外膜(しんがいまく))に炎症がおよぶことも少なくありません。
 炎症の原因としては、化膿性細菌(かのうせいさいきん)や結核菌(けっかくきん)、ウイルスなどの感染によるほか、心筋梗塞(しんきんこうそく)、膠原病(こうげんびょう)、悪性腫瘍(あくせいしゅよう)の転移、尿毒症(にょうどくしょう)などにともなっておこる場合があります。また、心臓手術後や薬剤によっておこることもあります。
 原因不明のものは特発性心膜炎(とくはつせいしんまくえん)といわれています。
[症状]
 発熱、胸の痛み、呼吸困難が代表的な症状です。胸の痛みは鋭いものから鈍いものまでありますが、まったくない場合もあります。痛みは、せきや深呼吸をしたり、からだを横にしたときに強くなり、からだを起こすと軽くなる特徴があります。
 急激な炎症で、心膜腔(しんまくくう)に液(心嚢液(しんのうえき))がたまって心タンポナーデ(「心タンポナーデ」)をおこすと、呼吸困難が強まります。
[検査と診断]
 問診や聴診のほか、心電図、胸部のX線撮影、心臓超音波検査が行なわれます。とくに心電図が診断の参考になります。また、炎症の強さや原因となる疾患を知るために採血検査も必要です。
 炎症が原因で心膜腔に液がたまった場合は、ときに心膜穿刺(しんまくせんし)という方法でたまった液を取り、液の性状や感染菌の有無を調べて原因が探られます。
[治療]
 原因によって治療法がちがいます。基本は入院して安静にし、消炎剤による薬物治療を受けます。
 感染が原因であれば、抗生物質や抗結核薬、ときにステロイドが使われます。ほかに原因となる病気がある場合は、その病気の治療も行なわれます。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「心膜炎」の意味・わかりやすい解説

心膜炎
しんまくえん

心外膜の炎症および滲出(しんしゅつ)液貯留をきたす疾患で、心嚢(しんのう)炎、心包炎ともよばれる。病因からはリウマチ性、結核性、敗血症性、尿毒症性、悪性腫瘍(しゅよう)性、外傷性、心筋梗塞(こうそく)性、特発性などに分けられ、心膜変化や滲出液の性状からは線維素性、漿液(しょうえき)性、化膿(かのう)性、出血性、収縮性などに分けられる。また経過により急性と慢性の2型に大別される。

 症状は、吸気時に増強する前胸部痛、呼吸困難、チアノーゼなどのほか、滲出液貯留による心臓圧迫症状として、ときに心音微弱、血圧下降、静脈怒張、奇脈などの心タンポナーデ症状を呈することがある。聴診によって特有の心膜摩擦音が聴取される。胸部X線撮影では、滲出性心膜炎の場合は氷嚢状の心拡大、収縮性心膜炎の場合は心膜の石灰化陰影がみられる。心電図では鏡像を伴わないST上昇が特徴である。また心超音波エコー法は、少量の滲出液でも検出できるため、滲出性心膜炎ではもっとも有効な診断法である。治療としては基礎疾患の治療が第一で、リウマチ性にはサリチル酸や副腎(ふくじん)皮質ホルモン剤、結核性には抗結核剤が用いられる。心タンポナーデ症状を呈する場合には、放置するとショック状態に陥るため、診断を兼ねて心膜腔(くう)穿刺(せんし)による貯留液の除去が行われる。収縮性に対しては心膜切除術が行われる。

 予後は特発性やウイルス性などの場合は良好であるが、そのほかの場合は適切な治療が行われなければ不良である。

[井上通敏]

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世界大百科事典(旧版)内の心膜炎の言及

【心囊炎】より

…心囊炎とは,心臓を包む心膜pericardium(心臓の表面を包む心外膜epicardiumと狭い心膜腔を隔てて心臓を包む狭義の心膜から成る)の種々の原因によって起こる炎症病変の総称であり,心膜炎あるいは心包炎ともいわれる。心囊炎は通常,急性心囊炎,慢性心囊炎,先天性心囊炎の三つに大別される。…

※「心膜炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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