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憑霊 ヒョウレイ

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

憑霊
ひょうれい
spirit possession

神霊(しんれい)、死霊(しりょう)、生霊(いきりょう)その他の霊的存在または超自然的な力が人物その他に入り込むか、あるいは外側から影響して、当該人物その他に聖なる変化を生じさせる現象。精霊憑依(ひょうい)の略語。霊的存在が人物に憑依する現象には大別して三つの型がある。(1)霊的存在が当人の身体に入り込み人格が霊格に変わり、「吾(われ)は某々神である」などと第一人称で表白する。(2)身体や内臓に憑(つ)き、当人を身心異常にさせる。人格変化はない。(3)当人の目や耳に霊的存在が直接働きかける。当人には神の姿が見えたり、声が聞こえたりする。(1)にはトランス(通常意識の変異状態)が伴うことが多い。
 わが国においては、霊的存在や力は人間のみではなく他の事物、動物、自然物にも憑依する。動物(キツネ、ヘビ、犬など)、植物(ススキ、榊(さかき)、杉、松など)、自然物(岩、石、山など)、人工物(神・仏像、位牌(いはい)、墓など)などへの憑霊はよく知られている。憑霊は人類学や民族学、宗教学におけるシャーマニズム研究の進展に伴って明らかにされた領域である。それは霊的存在や超自然力の役割や作用への信念、観念を基盤にしており、各地の宗教現象のなかに広くみられるものである。シャーマンの役割の重要な一つは祓霊(ふつれい)であるが、それは憑依した悪霊や力の除去、追放を意味する。新宗教の教祖の多くは憑霊を通じて出現することが少なくない。わが国の「憑き物」は複雑にして多様な憑霊現象である。[佐々木宏幹]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典内の憑霊の言及

【幻覚】より

…幻や夢は,神霊,死霊,祖霊など霊的存在を含む〈他者〉との直接接触・交流の回路であり,媒体であるとされるからである。人類学者ブールギニョンE.Bourguignonは幻覚を〈トランス〉の類似概念であるとし,トランスにおいて自己の外界に対象を知覚・認識するのが幻覚であり,同じトランスにおいてであっても,対象が自己に憑入(ひようにゆう)し,対象と自己が同一化するのが〈憑霊〉であるとして,両者を区別している。幻覚は各地のシャーマン(予言者,見者など)のイニシエーションおよび儀礼において,シャーマンが霊的存在や霊界と直接接触・交流する際の不可欠の条件である。…

【シャマニズム】より

…直接性とはシャーマンがみずからの魂を肉体から分離させ,この魂が他界の神霊や精霊を訪ねて彼我直接に接触することであり,逆に神霊・精霊を招き呼んでみずからに憑依(ひようい)させ,あるいは神霊・精霊と直接話し合い,指示を仰ぐことである。一般に前者を〈脱魂型ecstasy type〉,後者を〈憑霊型possession type〉のシャーマンと呼んでいる。地域により脱魂型の濃厚なところ,憑霊型の多いところ,両者が重なり合っている場合などある。…

【憑物】より

…憑物とは,文字どおりに解すれば,人間その他の事物に憑依(ひようい)する〈もの〉,つまり霊のことである。このような意味にそって憑物をめぐる信仰を理解するならば,一方に事物に憑く可能性をもったさまざまな霊たちの群,他方にはそうした霊に憑かれる人間を含むさまざまな事物の群,そして特定の霊が特定の事物に憑いた状態,つまり憑霊現象の群が想定される。したがって,これら三つの群の複雑な関係とそれを支える諸観念の統合化された総体を,憑物信仰ないしは憑霊信仰と呼ぶのが妥当であるが,憑物研究を進めてきた民俗学や文化人類学の研究はまだその段階にまで達していない。…

※「憑霊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

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