戯える(読み)ソバエル

デジタル大辞泉 「戯える」の意味・読み・例文・類語

そば・える〔そばへる〕【戯える】

[動ア下一][文]そば・ふ[ハ下二]
風が甘えかかるように、やわらかく吹く。
「冷たい頸元に―・える軽い風に吹かれていると」〈秋声あらくれ
動物などがたわむれる。
「犬は木陰を離れて…原中で羽虫を―・えて居る」〈風葉青春
なれ親しんでふざける。甘える。
「―・へたる小舎人童こどねりわらはなどに、ひきはられて泣くもをかし」〈・三九〉
日照り雨が降る。〈俚言集覧
[補説]室町時代以降はヤ行にも活用した。→そば

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「戯える」の意味・読み・例文・類語

そば・えるそばへる【戯】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 ハ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]そば・ふ 〘 自動詞 ハ行下二段活用 〙
    1. 馴れてたわむれる。ふざける。あまえる。
      1. (イ) 馴れ親しんであまえる。
        1. [初出の実例]「そばへたる小舎人童(こどねりわらは)などに、ひきはられて泣くもをかし」(出典:枕草子(10C終)三九)
      2. (ロ) 度を越して馴れ馴れしくする。人を軽んじてふざける。
        1. [初出の実例]「あしき女ばうの事〈略〉人そはへたるものわらひ」(出典:宗祇短歌(江戸初))
      3. (ハ) (犬・猫・虎などの動物が)じゃれる。
        1. [初出の実例]「目貫(めぬき)くりから不動に猫のそばへる所を物ずき」(出典:浮世草子御前義経記(1700)七)
    2. そよ風がやわらかに吹く。
      1. [初出の実例]「初花のひらけはじむる梢よりそばへて風の渡るなりけり」(出典:山家集(12C後)上)
    3. 日が照っているのに、小雨が降りすぎる。〔俚言集覧(1797頃)〕
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 ハ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]そば・ふ 〘 他動詞 ハ行下二段活用 〙
    1. あまえさせる。安楽にする。
      1. [初出の実例]「身外のことを案じつづくれば、身をそばへふるべきやうもないぞ」(出典:中華若木詩抄(1520頃)中)
    2. ( 「…をそばえる」の形で用い ) …とふざけ、たわむれる。いたずらをする。
      1. [初出の実例]「三斑(みけ)の小猫の珠数をそばへて駆け出たるを」(出典:浮世草子・好色万金丹(1694)五)

戯えるの補助注記

( 1 )歴史的かなづかいについて、「疑問仮名遣」では「万葉集」の「いそばふ」(ただし四段活用)と関連のあるもの、さらに中古の「おそばふ」の略であるとして「そばふ」と認めている。
( 2 )室町時代頃からヤ行にも活用した。→そばゆ(戯)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android