精選版 日本国語大辞典 「戴く」の意味・読み・例文・類語
いただ・く【戴・頂】
- [ 1 ] 〘 他動詞 カ行五(四) 〙
- [ 一 ]
- ① 頭の上に載せる。また、上にあるようにする。
- ② つつしんで受けたり、ありがたい気持ちを表わしたりして、物を高くささげる。また、敬って大切にする。上の者として敬い仕える。奉戴する。
- [初出の実例]「朝(みかど)を助(あななひ)奉り輔(たす)け奉りて、頂伎(いただキ)恐(かしこ)み供奉(つかへまつり)つつ」(出典:続日本紀‐天平元年(729)八月二四日・宣命)
- 「サカヅキヲ itadaqu(イタダク)〈訳〉さかづきを上げる」(出典:日葡辞書(1603‐04))
- ③ ( 身分の高い人から物をもらうとき、高くささげて受けるところから ) 「もらう・買い受ける」の謙譲語。頂戴する。
- [初出の実例]「足利殿は代々相州の恩を戴(イタタ)き徳を荷(にな)って」(出典:太平記(14C後)九)
- 「リンシヲ ソエテ クダサレタレバ、Esopo コレヲ itadaite(イタダイテ)」(出典:天草本伊曾保(1593)イソポの生涯の事)
- ④ 「食う・飲む」の謙譲語。つつしんで飲食する。また、「食う・飲む」の丁寧な言い方。
- [初出の実例]「『さらば呑う。扨是をそなたへおまさう』『わらはがいただきませう』」(出典:虎寛本狂言・猿座頭(室町末‐近世初))
- 「日に三度米飯を三膳づつ頂(イタダ)いてゐるは」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四)
- ⑤ ありがたいと感じる。また、ありがたく拝む。
- [初出の実例]「よき風なる殿ぶりとかしらからいただかせて、皆うれしがらせ」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)六)
- ⑥ ( 「小言をいただく」意から ) 物事をしそこなう。しくじる。
- [初出の実例]「今夜はいただいた晩だ。よっぽど評判がわりい」(出典:洒落本・船頭深話(1802)二)
- 「だうりで茶番のたんびにいただくはずだあ」(出典:滑稽本・八笑人(1820‐49)初)
- ⑦ 大した苦労もなく手に入れる。勝負事で勝ちを得ることや他人の考えをそのまま引用することにいう。→いただき⑧。「この試合はいただいた」「そのアイデアいただくよ」
- [ 二 ] 補助動詞として用いられる。
- [ 一 ]
- [ 2 ] 〘 他動詞 カ行下二段活用 〙 頭の上に載せる。いただかせる。
- [初出の実例]「頭に七宝花冠を戴(イタタケよ)」(出典:阿吒薄倶元帥修行儀䡄嘉保二年点(1095))
戴くの語誌
本来は、頭上に載せる意の普通語であったが、上位者から物をもらう時、同様の動作をしたところから、中世以降、もらう意の[ 一 ]③の謙譲用法が確立した。また、上位者からもらった物を飲食するところから、飲食する意の[ 一 ]④の謙譲用法が生じ、さらに、丁寧用法も派生した。