打返(読み)うちかえし

精選版 日本国語大辞典 「打返」の意味・読み・例文・類語

うち‐かえし ‥かへし【打返】

[1] 〘名〙
① もう一度打つこと。もう一度打ちかかること。
※仮名草子・竹斎(1621‐23)上「双六の習ひには、後(おくれ)に三の積石(つもりいし)、〈略〉重四先(ぢゅうしせん)の打返し」
② 繰り返すこと。反復
洒落本・当世気どり草(1773)瀬川菊の露「又候今度の打返し」
③ 古綿を打ち直して再生させること。また、その綿。打ち直し。
歌舞伎大道具で、舞台正面の背景などの書割(かきわり)が中央から前方に折れ、裏面の部分が現われて一瞬のうち情景が変わるようにした仕掛け。また、それを用いること。胴折(お)れ。
※歌舞伎・貞操花鳥羽恋塚(1809)五立「打返(ウチカヘ)しにて死骸消え」
能楽囃子(はやし)で、大鼓、小鼓、太鼓の打つ中間手配の一つ。太鼓の打上(うちあげ)、打込(うちこみ)に必ず接続して大ノリ謡を導く。
⑥ 建築で、左右または上下の対称なことをいう。うたせかえし。〔日本建築辞彙(1906)〕
⑦ 料理で魚の背びれの部分の名称。
[2] 〘副〙
① 繰り返して。何度も。かえすがえす。
※後撰(951‐953頃)恋四・七九七「打返し見まくぞほしき故郷やまとなでしこ色やかはれる〈よみ人しらず〉」
② 前とは反対に。逆に。改めて。
落窪(10C後)二「今うちかへし仕うまつらんに御心はゆきなん」

ぶち‐かえ・す ‥かへす【打返】

〘他サ五(四)〙
① 打たれた仕返しに、その人を打つ。先方へ打って返す。うちかえす。
浄瑠璃女殺油地獄(1721)上「食はす拳を請外してはぶち返し、叩合ひ掴合ふ」
② (「ぶち」は接頭語) ひっくり返す。くつがえす。
滑稽本和合人(1823‐44)初「花生(はないけ)をぶちけへしたのだ」
③ くり返す。
※ありのすさび(1895)〈後藤宙外〉五「清太郎先刻の憤怒(いかり)やっと鎮まりかけしが、又反覆(ブチカヘ)し」

うち‐かや・す【打返】

〘他サ四〙 (「かやす」は「かえす」の変化したもの) =うちかえす(打返)
※四河入海(17C前)一八「身をうちかやし、うちかやしして、臥して」

ぶっ‐かえり ‥かへり【打返】

〘名〙 歌舞伎衣装の仕掛けの一つ。ある人物が本名を名乗るとか、妖怪が本性をあらわすとかいう場合に、その舞台上で、直ちに衣装転換をするもの。衣装の上部が前後に割れて垂れ下がり、別の衣装にかわったように見せる。

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