室生犀星の第2詩集。1918年(大正7)9月感情詩社より刊行。1912-14年にかけて《朱欒(ザンボア)》その他に発表された犀星初期の抒情詩が中心で,その大部分を占める文語詩の流麗で自然なリズムは,北原白秋の《思ひ出》に続く抒情小曲の名作とされる。これらの詩は詩集にまとめられる以前に,萩原朔太郎と刊行した雑誌《感情》(1916年6月~19年11月)の第2,3号に編集掲載されたことがあるが,再録のたびにかなり改作がされている。〈ふるさとは遠きにありて思ふもの……〉の〈小景異情〉や〈寂しき春〉などがよく知られている。13年5月《朱欒》に発表された〈小景異情〉はまだ無名だった朔太郎を感激させ,以後2人は親交を結んだ。
執筆者:鳥居 邦朗
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
室生犀星(むろうさいせい)の第二詩集。1918年(大正7)感情詩社より刊行。収められている詩編は第一詩集『愛の詩集』よりも早い時期のもので、1912年秋から2、3年の間に発表された、詩人犀星誕生期の作品である。1部、2部は主として故郷金沢で不遇のうちに詩を志す心情を歌った文語抒情詩で、「ふるさとは遠きにありて思ふもの」という有名な「小景異情」や「寂しき春」などを含む。3部は東京での作で、『愛の詩集』に通ずる求道的なものも現れ、口語調も混じってくる。
親友萩原朔太郎(はぎわらさくたろう)はこの詩集を、北原白秋(はくしゅう)の『思ひ出』以後における日本唯一の美しい抒情小曲集であるといった。
[鳥居邦朗]
『『室生犀星詩集』(岩波文庫・新潮文庫)』
…一方,白秋門の萩原朔太郎は《月に吠える》(1917)や《青猫》(1923)によって近代人の孤独な自我の内景を表現し,〈“傷める生命”そのもののやるせない絶叫〉とみずからいう世界を言語化した。彼の親友室生犀星は《抒情小曲集》《愛の詩集》(ともに1918)を出して,同じく大きな影響を与えた。 大正中期には大正デモクラシーを反映したいわゆる民衆詩派の白鳥省吾,百田宗治,福田正夫,富田砕花らが,農民や労働者の生活を詩にとりあげた。…
※「抒情小曲集」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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