グリーグ(読み)ぐりーぐ(英語表記)Edward Hagerup Grieg

日本大百科全書(ニッポニカ) 「グリーグ」の意味・わかりやすい解説

グリーグ(Edward Hagerup Grieg)
ぐりーぐ
Edward Hagerup Grieg
(1843―1907)

ノルウェーの作曲家。6月15日スコットランドの家系に生まれる。生地ベルゲンピアニストであった母に6歳のころからピアノ演奏の基礎を学び、14歳ころから作曲を始める。ライプツィヒ音楽院でE・F・ウェンツェルやI・モシェレスにピアノを、E・F・リヒターとM・ハウプトマンに和声と対位法を学ぶ。一方、ゲバントハウスの音楽会でメンデルスゾーンシューマンショパン、ワーグナーらの当時の新しい音楽を知り、強い影響を受けた。1862年春、故郷ベルゲンでピアニストおよび作曲家としてデビューしたが、翌年コペンハーゲンに向かい、ガーゼNiels Gade(1817―90)に会う。さらに64年、同世代のノルウェーの作曲家ノールロークRikard Nordroak(1842―66)との出会いは、グリーグのなかに高まっていた民族音楽への関心を決定づけることになった。66年クリスティアニア(現オスロ)に移り、活発な演奏活動のかたわらノルウェー民謡を研究。そしてピアノ協奏曲イ短調(1868)で作曲家としての地位を確立した。

 1870年にはリストの招待を受けて政府の奨学金でローマに赴く。71年作曲家スウェンソンJohan Svendsen(1840―1911)とともにクリスティアニア音楽協会を創立。70年代後半には劇作家イプセンとの親交を深め、政府の奨励金を得て作曲した付随音楽ペール・ギュント』(1876)は大成功を収めた。80~82年ベルゲン市立管弦楽団指揮者を務めたが、85年以降はベルゲン近郊のトロルハウゲンに移り(現在グリーグ記念館)、創作活動に専念した。1907年9月4日ベルゲンで没したが、これはイギリスへの演奏旅行のため家を出た数日後のことであった。「ノルウェーの自然、民衆の生活と歴史、民衆の詩を描くこと」を自らの務めと考えていたグリーグは、ピアノ曲『ユモレスク集』(1865)からバイオリン・ソナタ第3番(1886~87)、ピアノ曲集『スレッター』(1902~03)に至るまで、民族的色彩の強い作品を創作した。彼の作品の一つの中心は、優れた歌手である「妻への愛から生まれた」140曲の歌曲にあり、なかでもアンデルセンの詩による初期の『心の歌』(1864)が有名。また、ピアニストとしての彼の活躍の基礎であったピアノ独奏曲も重要な位置を占めており、とくに『叙情小品集』は全10集(1883~1901)に及ぶ。

[寺本まり子]


グリーグ(Nordahl Grieg)
ぐりーぐ
Nordahl Grieg
(1902―1943)

ノルウェーの詩人。ベルゲン生まれ。大学時代から冒険を好んで世界を旅して歩き、詩集『喜望峰を回って』(1922)、小説『船はさらに進む』(1924)を発表。のちオックスフォード大学に学び、バイロン、シェリー、キーツらを研究した『夭折(ようせつ)した詩人たち』(1932)などを出す。ジャーナリスト、劇作家、探偵小説家などとしても活躍、1932年から当時のソ連に遊んで共産主義に共鳴、35年に帰国してからは左翼文壇のホープとなる。戯曲『われらの名誉とわれらの力』(1935)、パリ・コミューンを扱った『敗北』(1937)が代表作。第二次世界大戦でドイツ軍が侵入すると徹底的抗戦を唱え、イギリスに逃れてそれを継続、最後は自ら爆撃機に乗ってベルリンを襲い、撃墜されて戦死した。有名な作曲家グリーグの縁者。

[山室 静]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「グリーグ」の意味・わかりやすい解説

グリーグ
Grieg, (Johan) Nordahl Brun

[生]1902.11.1. ベルゲン
[没]1943.12.2. ベルリン
ノルウェーの詩人,劇作家。大学時代から各国を旅行,オックスフォード大学にも学ぶ。詩集『喜望峰を回って』 Rundt Kap det Gode Håb (1922) ,小説『船はさらに進む』 Skibet går videre (24) などで注目され,次いでソ連滞在 (32~34) を経て共産主義に共鳴し,戯曲『われらの名誉とわれらの力』 Vår ære og vår makt (35) ,スペイン内乱での政府側の敗北に想を得て 1870年のパリ・コミューンを扱った『敗北』 Nederlaget (37) などで若い世代の代表になるが,1940年祖国がナチスの侵入を受けるやノルウェー亡命政権とともにイギリスに渡り,レジスタンス運動に従い,みずからも爆撃機に搭乗,ベルリン上空で戦死。音楽家 E.H.グリーグの縁者という。

グリーグ
Grieg, Edvard Hagerup

[生]1843.6.15. ベルゲン
[没]1907.9.4. ベルゲン
ノルウェーの作曲家,ピアニスト。ライプチヒ音楽院で学び,R.シューマンや F.メンデルスゾーンの影響を受けたが,ノルウェーの国民主義的作曲家 R.ノルドロークとの親交により次第に自己の作風を確立した。 1871年,クリスチャニアに音楽協会を設立。ピアニスト,指揮者としてヨーロッパ各地で活躍。主要作品『ペール・ギュント』,イ短調のピアノ協奏曲 (op.16) など。

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