抗真菌剤(読み)コウシンキンザイ

病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版 「抗真菌剤」の解説

抗真菌剤

抗真菌剤の外用剤も参照


製品名
《アトバコン製剤》
サムチレール(グラクソ・スミスクライン)
《アムホテリシンB製剤》
ハリゾン(富士製薬工業)
ファンギゾン(ブリストル・マイヤーズスクイブ)
《イトラコナゾール製剤》
イトラコナゾール(科研製薬、日医工、小林化工、Meiji Seika ファルマ、沢井製薬、日本ケミファ)
イトリゾール(ヤンセンファーマ)
《テルビナフィン塩酸塩製剤》
ケルガー(前田薬品工業、日医工)
テビーナ(岩城製薬)
テルビー(ダイト、ポーラファルマ、持田製薬
テルビナフィン塩酸塩(科研製薬、小林化工、佐藤製薬、沢井製薬、サンド、第一三共エスファ、第一三共、辰巳化学、ニプロESファーマ、長生堂製薬、武田テバファーマ、武田薬品工業、東和薬品、日本ケミファ、日本薬品工業、日医工、ニプロ、ファイザー、日本ジェネリック、富士製薬工業、富士フイルムファーマ、Meiji Seika ファルマ、陽進堂、フェルゼンファーマ)
ネドリール(高田製薬、マルホ
ラミシール(サンファーマ、田辺三菱製薬)
《フルコナゾール製剤》
ジフルカン(ファイザー)
フルコナゾール(共和薬品工業、沢井製薬、サンド、高田製薬、塩野義製薬、日医工、日本ジェネリック、富士製薬工業)
《フルシトシン製剤》
アンコチル(共和薬品工業)
《ボリコナゾール製剤》
ブイフェンド(ファイザー)
ボリコナゾール(日本ジェネリック、共和薬品工業、高田製薬、武田テバファーマ、武田薬品工業、東和薬品、日医工、第一三共エスファ、第一三共、高田製薬)
《ミコナゾール製剤》
フロリード(持田製薬、昭和薬品化工)

 真菌を包む細胞膜にダメージを与えて、真菌を死滅させる作用がある薬です。


 ミコナゾール製剤カンジダアムホテリシンB製剤はカンジダ、ボリコナゾール製剤は、アスペルギルス、カンジダ、クリプトコッカス、フサリウムスケドポリウムといった病原真菌の発育を抑える効果があり、消化管カンジダ症の治療、造血幹細胞移植における深在性真菌症の予防などに用いられます。ミコナゾール製剤は腟錠もあり、外陰腟カンジダ症の治療に使われます


 イトラコナゾール製剤は、内臓真菌症表在性深在性皮膚真菌症に、フルシトシン製剤フルコナゾール製剤は、体の内部(肺や消化管など)におこる真菌症の治療に効果がある薬で、真菌血症真菌性髄膜炎呼吸器真菌症消化管真菌症尿路真菌症腟炎などの広範囲な病気の治療に用いられます。とくにフルコナゾール製剤は、従来の抗真菌剤の「副作用が多く、再発しやすい」という欠点を改善した薬で、効力とともに安全性も高くなっています。


 テルビナフィン塩酸塩製剤は、外用抗真菌剤では治療がむずかしい場合に限って用いられる内服剤で、深在性皮膚真菌症スポロトリコーシス白癬性肉芽腫はくせんせいにくげしゅクロモミコーシス)、頭部などのみずむし爪カンジダ症の治療に使用されます。


 アトバコン製剤は、ニューモシスチス肺炎の治療剤です。


①過敏症状(発疹ほっしん、発熱などのアレルギー症状)をおこすことがあります。


 過敏症状がおこったら使用を止め、すぐ医師に相談してください。


②吐き気・嘔吐おうと、食欲不振、胃部不快感、下痢、便秘、腹痛、口内炎などの胃腸障害がおこることがあります。


 アトバコン製剤では、皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)、多形紅斑こうはん、 重度の肝機能障害、無顆粒球症白血球減少などがおこることがあります。アムホテリシンB製剤では、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死えし融解症がおこることがあります。イトラコナゾール製剤では、ショック、アナフィラキシー、うっ血性心不全、肺水腫、黄疸おうだん、肝障害、胆汁うっ滞、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死融解症、急性汎発性発疹性膿疱症、多形紅斑、剥脱性皮膚炎間質性肺炎がおこることがあります。


 そのほかに、テルビナフィン塩酸塩製剤では、重い肝障害、汎血球減少、無顆粒球症、血小板減少症、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死融解症、紅皮症、急性全身性発疹性膿胞症、横紋筋融解症、ショック、アナフィラキシー、薬剤性過敏症症候群、亜急性皮膚エリテマトーデスフルコナゾール製剤では、ショック、アナフィラキシー、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死融解症、血液障害、急性腎障害、肝障害、意識障害、けいれん、高カリウム血症、間質性肺炎、心室頻脈、QT延長、不整脈、偽膜性大腸炎、フルシトシン製剤では、血液障害、腎不全、などが現れることがあります。ボリコナゾール製剤では、ショック、アナフィラキシー、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死融解症、多形紅斑、肝障害、心電図QT延長、心室頻脈、心室細動、不整脈、完全房室ブロック、心不全、腎障害、呼吸窮迫症候群、ギラン・バレー症候群、血液障害、偽膜性大腸炎、けいれん、間質性肺炎、横紋筋融解症、低血糖、意識障害がおこることがあります。このような症状がおこったときは、使用を中止して、ただちに医師に報告してください。


③肝障害、血液障害などがおこることがあります。医師から検査を指示されることがあるので、必ず受けてください。


①錠剤、顆粒剤かりゅうざい、液剤、ゲル剤があって、食後の服用が原則ですが、1日の使用回数と使用時間・1回の使用量については医師の指示をきちんと守り、かってに中止したり、増量・減量しないでください。服用するときは、十分な水(コップ1杯以上の水)で飲んでください。


②問診の際にあらかじめ、持病・アレルギーなどの体質・現在使用中の薬の有無を医師に報告してください。また、使用前に薬の効果と副作用について医師・薬剤師からよく説明を聞き、注意事項をきちんと守ってください。とくに、過去に抗真菌剤やペニシリン製剤などで過敏症状をおこしたことがある人、妊婦または現在妊娠している可能性がある人、肝臓障害、腎臓障害、血液障害といった病気がある人は、この薬を使用する前にあらかじめ医師に報告してください。


フルコナゾール製剤では、心疾患または電解質異常のある人、ワルファリン使用中の人は医師に相談してから使ってください。


 ボリコナゾール製剤では、薬物過敏症の既往歴、重い肝機能低下、不整脈のある人および不整脈が現れやすい人、ワルファリン使用中の人は医師に相談してから使ってください。


 イトラコナゾール製剤では、薬物過敏症やアレルギーの既往歴のある人、肝・腎障害の人、うっ血性心不全またはその既往歴の人、ワルファリン使用中の人は医師に相談してから使ってください。


 テルビナフィン塩酸塩製剤では、ねむけ、ふらつき、めまいなどが現れることがあるので、自動車運転や危険を伴う作業にたずさわる人は注意してください。


 ボリコナゾール製剤では、自動車運転や危険を伴う作業は避けてください。さらに使用中止後も羞明しゅうめい(まぶしさ)、霧視むし(霧がかかったように見える)、視覚障害などの副作用が持続することがあるので、自動車の運転や危険の伴う作業(機械操作など)にたずさわる人は十分に注意してください。


 フルシトシン製剤では、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム使用中および使用中止後7日以内の人は医師に報告してください。


④この薬を服用中にほかの薬を使う必要があるときは、必ず医師に相談してください。


 イトラコナゾール製剤は、ピモジド製剤、脂質代謝改善剤のシンバスタチン製剤エルゴタミン酒石酸塩配合製剤や、イブルチニブ製剤ダビガトラン製剤、キニジン製剤、アスナプレビル製剤、ダクラタスビル・アスナプレビル・ベクラブビル製剤との併用はできません。


 フルコナゾール製剤では、トリアゾラム製剤、エルゴタミン酒石酸塩配合剤、ジヒドロエルゴタミン製剤、ピモジド製剤との併用はできません。


 ボリコナゾール製剤では、リファンピシン製剤、リトナビル製剤、カルバマゼピン製剤、長期作用型バルビツール酸誘導体、ピモジド製剤、トリアゾラム製剤などとの併用はできません。


 ミコナゾール製剤では、ワルファリンカリウム製剤、ピモジド製剤、キニジン製剤、トリアゾラム製剤、シンバスタチン製剤、アゼルニジピン製剤、ニソルジピン製剤、ブロナンセリン製剤、エルゴタミン酒石酸塩製剤、ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩製剤、リバーロキサバン製剤、アスナプレビル・ロミタピドメシル酸塩製剤との併用はできません。


 フルシトシン製剤を使用中に、アムホテリシンB製剤やトリフルリジン・チピラシル配合剤、骨髄抑制作用がある薬を併用したり、放射線照射治療を受けると、骨髄抑制作用が増強します。


 また、イトラコナゾール製剤フルコナゾール製剤を使用中に、催眠鎮静剤のトリアゾラム製剤、脂質代謝改善剤のシンバスタチン製剤、免疫抑制剤のシクロスポリン製剤、抗てんかん剤のカルバマゼピン製剤ピモジド製剤エルゴタミン酒石酸塩配合剤、抗血栓剤のワルファリンカリウム製剤などを併用すると副作用がおこりやすくなります。


 ボリコナゾール製剤は、リファンピシン、リファブチン、エファビレンツ、リトナビル、カルバマゼピン、長時間作用型バルビツール酸誘導体、ピモジド、キニジン硫酸塩水和物、トリアゾラム、麦角アルカロイドなどを使用中の人には使えません。


⑤光線過敏症が現れることがあるので、この薬を使用中は衣服や帽子の着用によって直射日光を避け、日焼け止めの効果が高いサンスクリーンを使用してください。

出典 病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「抗真菌剤」の意味・わかりやすい解説

抗真菌剤
こうしんきんざい

真菌によっておこる感染症に対する治療薬。真菌症には浅在性のものと深在性のものがある。浅在性のものにはカンジダ症、白癬(はくせん)などがあり、外用が可能で治療しやすいが、深在性の真菌症はカンジダ、クリプトコックス、アスペルギルスなどが原因菌で、内服または注射でしか適用できないので治療がむずかしい。抗真菌剤として第一にあげられるのはポリエン系抗生物質である。アムホテリシンBは内服、外用、注射ができ、とくに静脈注射ができる唯一の薬剤である。ナイスタチン、トリコマイシンは内服と外用、ペンタマイシン、ピマリシン、アザロマイシンは腟錠(ちつじょう)として用いられる。白癬菌に対して有効な抗生物質としてバイオチン、ピロールニトリン、シッカニン、グリセオフルビンがあり、グリセオフルビンは内服で適用される。このほかフルシトシンが内服で深在性真菌症に有効で、白癬、カンジダ症に対しては外用剤としてトルナフテート、クロトリマゾール、ハロプロジン、シクロピロクス、オラミン、エキサラミド、ミコナゾール、エコナゾール、イソコナゾールなどが用いられる。

[幸保文治]

『岩田和夫著『真菌・真菌症・化学療法――抗真菌剤を中心として』(1994・ソフトサイエンス社)』『久米光著『内臓真菌症対策マニュアル』(1994・かまわぬ書房、星雲社発売)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「抗真菌剤」の意味・わかりやすい解説

抗真菌剤
こうしんきんざい

真菌 (かび) によって引起されるヒトの真菌症の代表的なものには白蘚菌症 (水虫) があるが,最近,生体や環境に広く分布している弱毒菌による日和見内臓感染症が増加し,死亡例も少なくない。抗真菌剤として以前はグリセオフルビン,ニスタチン,トリコマイシン,アンフォテリンなどがおもに皮膚真菌症を中心に用いられてきた。近年,内臓真菌症の増加に伴って,合成抗真菌剤および抗真菌性抗生物質の開発が活発に行われている。合成真菌剤としてはアゾール系が主流であり,抗生物質にはアンフォテリンBに代表されるポリエンマクロライド,シロファンジンのようなリポペプチド,さらに環状デシペプチド,アミノ酸アナログ,ベンゾナフトキノンなどがある。

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