日本大百科全書(ニッポニカ) 「押出し加工」の意味・わかりやすい解説
押出し加工
おしだしかこう
extrusion
棒や管などのように断面が一様で長い製品をつくる金属加工法の一種。1797年イギリスでブラマJ. Bramahが鉄製のポットの中で鉛を溶かし、これを手押しポンプで吸い上げ、冷却凝固させながら管に押し出したのが始まりといわれている。その後1820年に水圧プレス機が発明されるまで、鉛管の押出し加工は工業的には行われなかった。一般に押出し加工では、まず素材をコンテナに入れ、次にラムでこれに圧力を加え、ダイス穴から素材よりも断面積の小さい製品を流出させる。ダイス穴の形状を変えることによって、管、角棒そのほか任意の断面形状の製品をつくることができる。また、圧延ではつくれないような断面形(ひれ付き放熱管やアルミサッシのような複雑断面形)の製品をつくることもできる。
押出し加工には大別して二つの方法があり、一つは直接押出し法あるいは前方押出し法とよばれるものであり、素材に加える圧力の方向と製品がダイスから出て行く方向とが同じ場合である。もう一つは、この方向が逆の場合であり、間接押出し法あるいは後方押出し法とよばれる。どちらの場合でも、素材を密閉容器内に閉じ込め、その一部に設けた小穴から材料を流出させるのであるから、加工には非常に大きな圧力が必要であり、大形機械設備が必要となるという欠点がある。しかし反面、材料には引張り力がかからないので、破断することなく、1回の加工で非常に大きな断面積減少を達成することができる。
素材をそれの再結晶温度以上に加熱して行う方法を熱間押出し、室温で行う方法を冷間押出しという。たとえば、アルミニウムの熱間押出しでは、素材断面積の300分の1の断面積の製品を1回の押出しでつくることができる。冷間押出しでは熱間押出しほど大きな加工度はとれないが、寸法精度の高い製品を能率よく生産することができる利点がある。鉄鋼の冷間押出しは第二次世界大戦直前、ドイツで化成皮膜を用いる潤滑法が開発されて初めて可能となった技術で、戦後は目覚ましく発展普及し、自動車部品その他の生産合理化に多大の貢献をしてきた。なお、冷間押出しにおける加工度は、使用する工具材料の強度上、あまり大きくとることができず、鉄鋼の場合は断面積減少率にして60~80%にとどまる。
[高橋裕男]