日本大百科全書(ニッポニカ) 「持続勃起症」の意味・わかりやすい解説
持続勃起症
じぞくぼっきしょう
性的興奮を伴わず長時間にわたってみられる陰茎の持続的勃起状態をいう。流入動脈血が多いためにおこるタイプと流出静脈系に障害があるためにおこるタイプに大別されている。いずれにせよ生理的勃起と異なり、亀頭(きとう)や尿道海綿体には充血がおこらず、陰茎海綿体だけが充血して痛みを伴う場合が多い。排尿は可能である。一つの独立した疾患というよりも、いろいろな疾患の一症状として現れ、原発性の陰茎癌(がん)をはじめ、泌尿器関係の悪性腫瘍(しゅよう)からの転移、白血病などのほか、陰茎の炎症や外傷、脊髄(せきずい)損傷に伴う場合もある。最近ではインポテンスの治療の目的で塩酸パパベリンやプロスタグランジンE1を陰茎海綿体に注射した後に発生する医原性のケースが増加している。また原因不明の場合も少なくない。治療としては原因の除去と、動脈血が多量に流入するケースにはまず陰茎海綿体内に貯留した血液を吸引除去した後に血管収縮薬(ノルアドレナリン、ドーパミン、クロニジン、酒石酸水素メタラミノール等)を陰茎海綿体内に注入する。また、充血していない尿道海綿体に陰茎海綿体の血液を流すようにしたり、これで効果がない場合は大伏在静脈に吻合(ふんごう)したりする副血行路造設術も行われる。予後で問題になるのは勃起不能(インポテンス)であるが、これは原因疾患によって異なり、悪性腫瘍や白血病によるものは勃起不能を残すことが多い。
[白井將文]