振動回転スペクトル(読み)シンドウカイテンスペクトル

化学辞典 第2版 「振動回転スペクトル」の解説

振動回転スペクトル
シンドウカイテンスペクトル
vibration-rotation spectrum

気体分子の運動には,振動回転並進の3種類があるが,このうち,振動と回転については量子化された準位を考えなければならない.振動準位間に遷移が起こるとき,回転準位も同時に変化するため,気体分子の振動スペクトルは,多数の規則的間隔をもって並んだスペクトル線群,ないしは帯スペクトルとして現れる.この一群のスペクトルを,振動回転スペクトルという.いま,振動量子数v回転量子数JKとし,振動数i0(cm-1),回転定数をABCとしたとき,長球対称こま形分子を例にとると,その振動回転エネルギー準位は,

    + hc(AB)K 2

となる.この準位間の遷移に関する選択則は,一般に,赤外スペクトルにおいては,

Δv = ±1,ΔJ = 0,±1,ΔK = 0,±1
であり,ラマンスペクトルにおいては,

Δv = ±1,ΔJ = 0,±1,±2,ΔK = 0,±1,±2
である(ただし,振動モードによりいくつかは禁制遷移となる).このことから,振動スペクトル(Δv = ±1)には,赤外で

ΔJ = -1,0,+1,
ラマンでは,

ΔJ = -2,-1,0,+1,+2
の回転準位の変化に対応する分枝を伴うことになり,それぞれ,O,P,Q,R,S枝とよばれる.これらの振動数は,ΔK = 0の場合,

と表され,Q枝を中心に規則正しい間隔で並ぶ.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「振動回転スペクトル」の意味・わかりやすい解説

振動回転スペクトル
しんどうかいてんスペクトル
rotation-vibration spectrum

回転と振動準位が同時に遷移するような分子スペクトルをいう。たとえば二原子分子では2つの原子間の距離を一定に保ちながら,ある軸のまわりを回転するような回転運動と,2つの原子間の距離が振動する振動運動はともに量子化され,エネルギー固有値
と表わされる ( J はスピン,I は慣性モーメント,n は振動量子数,hプランク定数,νは振動数) 。一般に赤外線吸収スペクトルラマンスペクトル領域に現れる。

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