代理権を授与する法律行為を授権行為という。現実に行われる代理行為は本人・代理人間における実質的権利義務関係(内部関係)と代理権ないし代理関係(対外的代理関係)とからなっているとみることができるが,授権行為の概念によって委任契約・雇傭契約などの内部関係設定行為と区別して代理権授与行為を考えることができ,具体的代理行為を内的および外的の二つの異なった法的視点から評価することができる。授権行為を契約と解するか単独行為と解するかについては意見が分かれている。なおドイツ民法167条は授権行為は本人から代理人に対する単独行為であり代理人の承諾を必要としないと規定する。
法哲学上の授権概念はケルゼンの純粋法学における中心概念として用いられている。ケルゼンは実定法の骨格を手続規範からなる授権の体系と考えたが,授権とは上位規範が下位機関に対して一定の枠内で立法ないし執行の権限を与えることを意味する。
執筆者:桂木 隆夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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