改訂新版 世界大百科事典 「採草採貝業」の意味・わかりやすい解説
採草採貝業 (さいそうさいかいぎょう)
海藻類と貝類を対象とする小規模な漁業。用途に適した特殊な雑漁具を使うことが多い。
採草seaweed collecting
海藻をとることを主目的とする漁業だが,農林水産統計上は藻類をとる漁業であっても潜水器漁業は除く。水深20mぐらいまでの藻類が対象なので,漁業の規模は小さく,3トン未満の漁船による操業がほとんどである。おもな対象種は,食用とするコンブ,ワカメと寒天原料のテングサ,オゴノリなどである。コンブは北海道周辺と青森県北部の一部で夏採取され,だいたい年間10万~15万tの水揚げがある。各地区ごとに毎年,漁期・漁獲量を定めている。浅い所ではコンブに鉤(かぎ)をかけ船べりに引き寄せ手で抜き取るが,普通はのぞき眼鏡で水中を見ながら,ねじりざおでねじり取る。ワカメは北海道・青森・岩手などで夏とるところがあるが,一般に冬から春にかけて採取される。以前は年間6万tを超える水揚げがあったが,最近は養殖ワカメが増え,天然ワカメの水揚げは3000tに減ってしまった。地域的には岩手を中心とした太平洋岸が多い。コンブ同様,眼鏡でのぞきながらねじり取ったり,鎌で切り取ったりする。テングサは海女が潜ってとったり,のぞきながら〈むしり〉と呼ばれる漁具でむしり取ったり,〈まんが〉という桁のようなものを引いてとったりする。だいたい3~10月が採取期であるが,各地方ごとに漁期が決められる。最盛期は6~7月。年間水揚量は3000~5000tで伊豆を中心とした太平洋中部地帯が多い。
採貝shellfish collecting
貝をとることを目的とする漁業。ただし,貝類をとる漁業であっても,潜水器漁業と小型底引網漁業は農林水産統計上は含めない。年間漁獲量は10万tを割っているが,この60%はアサリが占める。アサリは〈腰まき〉あるいは〈大まき〉という漁具で,浅いところでは水に入り,また深いところでは船の上から海底をさらって漁獲する。このほか,アワビ,サザエ,カキ,イガイなどは素潜りでとったり,のぞき眼鏡で水中を見ながら,やす,さざえとり,いがいおこしなどの刺突具,突剝(とつぱく)具,鉤鎌具,挟捩(きようれつ)具を用いて採取する。すべて小規模な漁業で,3トン未満の漁船を用いる形態がほとんどである。統計上は含まれないが小型底引網の一種である貝桁(かいけた)による貝の漁獲量は多い。対象はモガイ,アカガイ,トリガイ,ホタテガイ,イタヤガイ,ホッキガイなど,泥底・砂泥底に住む二枚貝類である。タイラギ,ミルクイガイなどは多く潜水器漁業でとられる。ツブ,バイなどやや深いところの巻貝類は籠でとることが多い。
執筆者:清水 誠
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報