日本大百科全書(ニッポニカ) 「タイラギ」の意味・わかりやすい解説
タイラギ
たいらぎ / 玉珧
pen shell
[学] Atrina pectinata
軟体動物門二枚貝綱ハボウキガイ科の二枚貝。房総半島から九州に分布し、内湾の潮間帯から水深20メートルの泥底にすむ。とくに有明(ありあけ)海、瀬戸内海、伊勢(いせ)湾、東京湾などの水深5~10メートルに多い。市場名をタイラガイ(平貝)という。普通、殻長22センチメートル、殻高11センチメートル、殻幅4.5センチメートルぐらいであるが、大きいものは殻長35センチメートル以上になる。殻は暗黄緑色で、薄くて壊れやすい。三角形状で背面は上下にまっすぐ、後端も平らで両殻の間は狭く開いている。殻表は平滑なこともあるが、放射肋(ろく)があってその上に棘(とげ)のような鱗(りん)状突起列を生じるものもあり、その突起の著しい型をリシケタイラギという。両殻の間から足糸束を出して泥中の礫(れき)などに付着し、突き刺さったように立っている。足は小さく、後閉殻筋(貝柱)は中央にあり大きくて丸く、おもにこれが食用にされ、前記のタイラガイの名でよばれる。産卵期は7~8月で、成長は1年で殻長12センチメートル、2年で20センチメートル、5年で30センチメートル。殻長17センチメートルぐらいで成熟する。漁期は12月から3月にかけてで、潜水または見突(みづ)きでとる。
近縁のハボウキガイPinna bicolorは、タイラギより殻が細長く、水深5メートルほどの海底に突き刺さったようにすんでいるが、タイラギほど多くはとれないため、漁業対象にはなっていない。漁夫はこれをタチガイとよび、地方的にはその閉殻筋を食用とする。
[奥谷喬司]