改訂新版 世界大百科事典 「撮像デバイス」の意味・わかりやすい解説
撮像デバイス (さつぞうデバイス)
image sensing device
入射光学像を,定められたテレビジョン方式に基づく電気的映像信号に変換する機能をもつデバイスの総称。一般にその動作は,入射光をその明暗に応じた電気量に変換する光電変換と,感度を高めるために電気量をある期間保持して積分する信号蓄積と,光学像に対応して得られた電気量の空間分布を時系列の映像信号として取り出すための走査からなる。入射光は可視光が一般的であるが,X線,紫外線,赤外線などの不可視光や,超音波を対象とするものもある。テレビジョン標準方式で使用される撮像デバイスは,1フィールド期間の信号電荷蓄積を行うものが多く,画面での被写体の動きを滑らかにしている。しかし,高速現象の観測には非蓄積形のものも用いられ,また,いったん撮像した信号電荷を長時間保持したり,長い時間をかけて読み出す場合もある。走査は,真空管内で電子ビームを偏向して行うものが多く,撮像管という。また,半導体基板内において,シフトレジスターや電荷転送素子などを使用して走査を行うものも開発されており,固体撮像デバイス,または撮像板という。これら撮像デバイスは感度,分光感度,解像度,残像などの諸特性や,運用性,信頼性,経済性などを満足せねばならず,多様な用途に応ずるため新デバイスの開発や改良研究が続けられている。
撮像管
撮像管はアイコノスコープに始まり多数の管種が開発され,各種の用途に使用されている。光電面を使用するイメージオルシコンimage orthiconは,白黒テレビ時代の主力撮像管であったが,大型,高価であるため,高感度を必要とする特殊用途に少数用いられるだけになった。しかし,光電面は,真空中の光電子を加速して,反射もしくは透過形の二次電子増倍や電子衝撃による誘起導電性,蛍光面を使用しての光束の増倍など増倍機構を実現しやすく,超高感度撮像管に使用される。SIT管silicon intensifier target tubeは光電子を数kVに加速してシリコン単結晶ターゲットを衝撃し,1000倍以上の利得を得ている代表的超高感度撮像管である。また,映像増倍管と撮像管を結合して使用する場合もある。光電変換に光導電現象を用いる撮像管を光導電形撮像管という。また,最初の光導電形撮像管であるビジコンの名を一般用に拡張して,ターゲット材料名や用途と結合し,Siビジコン,X線用ビジコンというようにも呼ぶ。図に管の構造を,表にターゲットに用いられている各種の光導電材料と特徴,用途を示す。図の電子光学系は通常の三極形電子銃と磁界集束,磁界偏向の場合であるが,高解像度,低残像を目標としたダイオード形電子銃,小型軽量低消費電力を特徴とする電界集束,磁界偏向,解像度の一様性のよい磁界集束,電界偏向などが開発されている。また,管の口径も1インチ(1インチは約2.54cm),11/4インチから2/3インチ,1/2インチの小型管まで多くの種類があり,放送用,工業用,民生用,特殊用途など幅広く使用されている。
固体撮像デバイス
光電変換を行う独立した画素構造をもつセンサーと,信号を時系列で取り出す走査素子が固体化され,一体化されたデバイスを固体撮像デバイス,または(固体)撮像板という。光電変換と電荷蓄積は,シリコン単結晶基板に分離して設けられたpnダイオードやMOSキャパシターで行うのが一般的であるが,そのうえに積層された光導電膜を使用するものもある。固体走査はファクシミリなどに使う一次元のものとテレビジョン用の二次元走査があり,各画素に順次選択パルスを送って信号電荷を読み出すXYアドレス形,電荷結合デバイス(CCD)やBBD(bucket brigade deviceの略)などを用いる電荷転送形など種々の方式がある。撮像管と比較して小型軽量,低電力,高信頼性などの長所があり,また,位置指定が正確にできることから各種の画像処理や観測など,新分野への応用も期待される。
ビジコンvidicon,プランビコンplumbicon,サチコンsaticon
これらは代表的光導電形撮像管で,後2者はカラーテレビ放送用に広く使われている。
ビジコンは1950年にRCA社で開発されたSb2S3をターゲットに使用した撮像管で,放送用としてはフィルム送像に用いられた。使いやすく経済性に優れ,工業用や単管カラーカメラなど各種の用途に多数使用されてきた。
プランビコンは,62年にフィリップス社により開発されたPbOをターゲットに用いた撮像管である。ターゲットはpinダイオード構造をもち,低暗電流,高感度,低残像を初めて実現し,カラー放送の時代を開いた。
サチコンは72年にNHKと日立製作所により共同開発された撮像管で,Se-As-Teのアモルファス半導体をターゲットに用いている。高感度,低残像であると同時に高解像力,低フレアが特徴で経済性もある。放送用,業務用(とくに小型カメラ用),高精細度TV用,単管カラー用など各方面に使用されている。
単管,単板カラーデバイス
カラー映像を得るには入射光を赤,緑,青の三原色に分け,3本の撮像管の出力を重ね合わせる。しかし,低価格で取扱いの容易さを必要とする家庭用カメラなどでは,多少画質は低下するが1個の撮像デバイスでカラー映像を得る単管,または単板カラーデバイスが使用される。撮像管や撮像板の上に三原色もしくはその補色により構成された微細構造を有する色フィルターを設置し,色情報を有する信号を取り出す。色フィルターには単管では縞模様,単板では各画素に対応した市松模様のものなどが使用され,ビートなど各種の疑似信号を避け,感度と色再現をよくするため各種の方式が考案されている。撮像管には量産性のあるビジコン,サチコン,ニュービコンnewviconなどが使用され,とくに2/3インチ,1/2インチの小型管が多く,小型軽量化と低価格が目標とされている。今後この分野での撮像管と撮像板の競合が注目される。
執筆者:後藤 直宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報