釣魚の際、魚が捕食する餌(えさ)を模してそのかわりに用いるもの。擬似餌(ぎじえ)ともいう。なまの餌を扱う手間を省くだけでなく、魚との知恵比べの要素が深まることが釣り人に好まれる。文献のうえでは、紀元前3世紀のギリシアの詩人テオクリトスや同時代の博物学者であるクロディアス・エリアンの著書に擬餌のことが記述されている。擬餌に鉤(はり)をつけたものを擬餌鉤(擬似鉤)という。この擬餌鉤には、釣ろうとする魚によっていろいろな種類があり、同じ魚種であっても状況によって好む擬餌は多様である。
[松田道雄]
古くからあるものはアユのドブ釣りに使う擬餌鉤で、江戸時代には蚊鉤といわれ、現在ではアユの毛鉤といわれている。鉤に羽毛を巻き、糸を結んだところには漆を小さな玉とし、それに金箔(きんぱく)をつける。羽毛は何種かの鳥から選び、色も多様である。日本の毛鉤はオランダ起源との説もあり、大形の加賀鉤と小形の土佐鉤が二大源流である。江戸時代は、藩の下級武士などの内職で生産された。一時は1000種を超えたが、現在でも数百種類がつくられている。アユのほかに、ヤマメ、イワナ、オイカワ、ウグイ釣り用の毛鉤もある。日本古来の毛鉤釣りは、西洋のフライフィッシングと違いリールを使わないのが特色である。海水魚を釣るのにも毛鉤が使われる。毛鉤はバケ(化)ともよばれ、鳥の羽毛のほか、カワハギ、ハモ、サバ、ナマズの皮を乾燥させたものや、ネコの皮、サメの腸も珍重される。さらに角(つの)と称して、マッコウクジラの歯や牛の角、象牙(ぞうげ)などに魚皮を組み合わせたものなどがある。外国と違い、おもに職業漁師によって開発されたものが多い。これらの擬餌を船でゆっくり引いて釣る曳(ひ)き釣りの漁法が古くから発達していた。ブリ、サワラ、カジキなどをいまもこの方式で釣っている。
[松田道雄]
ルアーは誘惑するものとかおとりの意味があり擬餌の総称でもあるが、フライ(毛鉤)は、習慣的にルアーとは別の範疇(はんちゅう)とされている。フライは、水面に浮いた昆虫を模したドライ・フライと、水中や水底を流れる昆虫などをまねたウェット・フライに大別される。ドライ・フライは双翅(そうし)(ウィング)が鉤軸に直角で、水面に接したときに抵抗があり、沈みにくいようになっている。重量のきわめて少ないフライを、ねらった箇所の水面に投射(キャスティング)するには熟練を必要とする。ウェット・フライは双翅が鉤軸に対して斜めについていて、水中に速やかに沈むようにつくられている。かならずしも飛行する昆虫ばかりでなく、水生の昆虫の幼虫を模したニンフや、傷ついたり弱った小魚をまねたストリーマーなどもある。ウェット・フライフィッシングでは、フライが水中に潜ったらリールで道糸を巻き込むか、左手で糸をたぐり寄せながらフライに微妙な動きを与える。日本古来の毛鉤は、形態は西欧のウェット・フライに似るが、釣り方はドライ・フライフィッシングに似る。海水魚ではサーフ・トローリングやトローリングなどの際ルアーを使用する。
[松田道雄]
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