フライフィッシング(読み)ふらいふぃっしんぐ(英語表記)fly fishing

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フライフィッシング」の意味・わかりやすい解説

フライフィッシング
ふらいふぃっしんぐ
fly fishing

フライは蠅(はえ)のことだが、釣りでは釣り鉤(ばり)に鳥の羽などを巻いた擬似(ぎじ)鉤のことで、これで魚を釣るのがフライフィッシング。日本では享保(きょうほう)年間(1716~36)の『釣魚(ちょうぎょ)秘伝・何羨録(かせんろく)』にアユを釣る蚊鉤(かばり)が紹介されているが、これもフライの一種。またヤマメイワナの渓流魚を釣るテンカラ釣りの擬似鉤も同じ。しかし、欧米から日本に入ってきたフライフィッシングとよぶ釣り方は、竿(さお)とリールを使い、フライをかなり遠くまでキャストして釣る点に大きな違いがある。

 フライフィッシングに向く対象魚は、ニジマス、イワナ、ヤマメ、ブラウントラウトなど、海水魚ではイナダシイラカツオ、スズキ、サバなど回遊性の強い魚を中心にかなり広い範囲に及ぶ。もっともこの釣りに向いているのは淡水域ならサケ科の魚、海水域なら背の青い魚ということもできる。フライは、水面に浮くドライ・フライと、沈むウェット・フライに大別できる。専用の鉤に、いろいろな鳥の羽を主体にして、魚の好む水生昆虫や成虫に似せたフライ(イミテーション・フライ)や、魚が好みそうなものを模索しながらつくったフライ(ファンシー・フライ)があり、それぞれのパターンに名前がつけられている。

 このごく軽いフライを魚のいるポイントに投入するには、専用のフライ・ロッド(竿(さお))と、フライ・リール、そして専用のラインを使う。ロッドとラインはバランスが必要で、対象魚に応じたラインを決めたら、それに適合した表示のあるロッドを選ぶのが決まりである。これを無視すると飛距離も伸びない。米国釣具製造組合(略称AFTMA)の規格によるライン番号があり、これでラインを選んだら、ロッドも同じAFTMAによる同じ番号のものを選べばいいわけである。ただ、このときフライの大小とのバランスも当然忘れてはならない。フライ・ラインには、先端から末端まで均一の太さのレベル・ライン(表示L)、中心部が均一で両端が先端に向かい徐々に細くなるダブル・テーパーライン(同DT)、重さが先端部に集中しているウェイト・フォワード・ライン(同WF)などがあるが、よく使われるのはDTである。ロッドとラインの重量などのバランスを無視せず、基本的なキャスティングを身につければ、軽いフライも思うがままにポイントに入り、ねらった魚がフライにヒットする。ルアーフィッシングとともに、スポーツ性の非常に高い釣りである。

[松田年雄]

『芦沢一洋著『フライフィッシング全書』(1983・山と渓谷社)』『E・グレイ著、西園寺公一訳『ナチュラリスト・ブックス2 フライ・フィッシング』(1985・TBSブリタニカ)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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