政所下文(読み)まんどころくだしぶみ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「政所下文」の意味・わかりやすい解説

政所下文
まんどころくだしぶみ

摂関家・将軍家東大寺などの大寺社が、権門(けんもん)として家政運営や荘園(しょうえん)支配を行うために政所から発給した家政文書。11世紀中期に、それまでの「符(ふ)」「牒(ちょう)」の公的文書にかわって発給手続、形式ともに自由な下達文書として発生した。摂関家や大寺社では、訴訟判決や特許状など永久的効力をもつ文書に用いられた。国司(こくし)庁宣(ちょうぜん)など国政文書を付帯して機能することも多く、もっとも権威ある文書とされた。将軍家でも所職給与や譲与安堵(あんど)など重要事項に用いられ、判決には新様式の下知状(げちじょう)が用いられた。しかし、家政機関内部での政所の地位低下や後醍醐(ごだいご)天皇による綸旨(りんじ)の絶対化などにより、政所下文は御教書(みぎょうしょ)や下知状にとってかわられ14世紀中期には消滅した。

[井原今朝男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「政所下文」の意味・わかりやすい解説

政所下文
まんどころくだしぶみ

平安時代中期以降,摂関家以下の公卿や大社寺の政所から発せられた下達文書。別当長吏などの家司が連署した。武家でも源頼朝が政所を設置してから,将軍家政所下文が発せられた。

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旺文社日本史事典 三訂版 「政所下文」の解説

政所下文
まんどころくだしぶみ

政所の家司が,家政や荘園事務に関して出した私文書
摂関政治とともに,政所下文が,国政上のほとんどの事務を処理鎌倉幕府の政所下文も同じ形式で,政務財政はこれで処理されるようになった。

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世界大百科事典(旧版)内の政所下文の言及

【下文】より

…下文の最も早い形は,9世紀から見える官宣旨(弁官下文)で,太政官符・牒に代わって,太政官の一部局である弁官局から発給され,形式としては差出所(左・右弁官)と宛所の間の伝達文言に〈符〉に代わって〈下〉を用いる点が特徴である。11世紀に至り,荘園制や公領請負制が進展すると,領主や官司は,その支配のため政所を設け,政所から荘園・公領の在地に下命する文書として下文を用いたが,これが政所下文で,13世紀ころ奉書や書下に代わるまで盛んに用いられた。下文は,律令官司が土地・人民を直接支配する原則が崩れ,請負制が主流になる時代において,請け負った在地や地下人を支配する文書ということができる。…

【政所】より

…特に摂関家政所では別当,令,知家事,案主,従などに分掌化した多くの家司を抱え,彼らは殿下御領,家領荘園,氏人の進退などのほか一般政治にも関与した。11世紀には下達文書として〈摂関家政所下文〉の様式も定まるが,これは家産の領域を超えて諸権門の利害調停という国家的機能をも果たした。貴族社会では三位となって資格を得ると政所を置くのが普通となり,婚姻や移徙(わたまし)があると政所始(まんどころはじめ)の儀式を行った。…

※「政所下文」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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