教会裁判所(読み)きょうかいさいばんしょ

百科事典マイペディア 「教会裁判所」の意味・わかりやすい解説

教会裁判所【きょうかいさいばんしょ】

ヨーロッパにおけるキリスト教会の司法的機関。中世後期以降ローマを頂点とする各地教会裁判所の活動は,世俗国家の裁判権と拮抗(きっこう)して高度な発展を遂げ,特に全ヨーロッパにわたる統一的な普通法形成に関して歴史的に重大な機能を果たしたとされている。近代国民国家の発展以降,教会裁判所の管轄権じたいは段階的に狭めれられていき,現在では教会と聖職者に関する事件のみに限定されているのが普通。ただしイタリアなどでは,コンコルダートに基づいて,カトリック教会裁判所が現在でもなお婚姻に関する部分的な管轄権を保持している。→教会法

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「教会裁判所」の意味・わかりやすい解説

教会裁判所
きょうかいさいばんしょ

初期キリスト教会では,特に司教制の確立後,司教が教会の秩序維持に必要な権限を行使し,また信者間の紛争に対し仲裁判断を下した。前者は教会の刑事裁判の起源であり,後者が民事裁判の起源である。元来,教会裁判所の権限は教会内部にとどまるものであったが,中世以後教皇権が伸長し,教会勢力が世俗的にも強化されてくると,教会事項のみならず世俗の一般事項 (たとえば,婚姻,婚約,十分の一税,擁護権,宣誓を伴う契約,遺言貧民寡婦孤児など法的救助を欠く者の事件,当事者の一方に罪悪 peccatumが存する事件など) にも管轄権をもつにいたった。審級制をとり,第1審は各司教区の,第2審は他教区の裁判所またはロタ (聖論) 裁判所であった。ローマ法やカノン法の専門家から成るこの裁判所は,非専門家から成る当時の世俗裁判所に対し啓蒙的かつ指導的役割を演じた。

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