中国の古典を通じて平安時代の貴族社会や寺社にひろまったとみられ,〈旧儀〉〈先例〉に対して,新しい儀法,規式,事柄などをさす語として中世・近世にさかんにもちいられた。従来はみられなかった様相,事態,方法などをも幅ひろく包摂する語であり,中世においては,ほんらい領主からその権益(特権)を認められていた商人組織に対抗しつつ新たに台頭し活動しはじめた商人を〈新儀商人〉と呼んだりした。また,〈新儀を凝(こ)らす〉とか〈新儀を巧(たく)み出(い)だす〉とかいえば,創意工夫をかさねて〈新しいものを生み出す〉という意味で良いこととみられ,たとえば建武新政にさいして後醍醐天皇が〈朕が新儀は未来の先例たるべし〉(《梅松論(ばいしようろん)》)と宣言したのもその一例といえよう。しかし,いっぽうには〈よからぬ(悪い)新儀〉もあり,それが〈法に違(たが)うこと〉をさす〈非法(ひほう)〉の語と直結して〈新儀非法〉の新語が生まれ,とくに中世の荘園領主や武家政権が違法者,反逆者を非難するとき,しきりに適用した。
執筆者:横井 清
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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