日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
日本私立学校振興・共済事業団
にほんしりつがっこうしんこうきょうさいじぎょうだん
私立学校への助成や教職員の共済事業を行う特殊法人。特殊法人改革の一環として、日本私立学校振興・共済事業団法(平成9年法律第48号)に基づき、1998年(平成10)に日本私学振興財団と私立学校教職員共済組合が統合されて発足した。特殊法人改革後に残った唯一の事業団である。助成事業として、教育の充実や経営の安定のため、私立学校収入のほぼ1割に相当する、国の私学助成金(正式名称は私立大学等経常費補助金)を各学校法人へ配分する役割を担う。校舎、体育館、机、図書などの整備や災害復旧、公害対策向けの貸付け(2022年実績で年間約570億円)、企業や個人からの寄付金の各法人への配布、若手・女性研究者向け奨励金の交付などを行っている。共済事業は教職員の福利厚生を図るため、私立学校教職員共済法(昭和28年法律第245号)に基づき、保健・休業・災害給付(被扶養者約34万人、2022年)や年金給付(厚生・共済・職員年金給付者数約59万人、2022年)などを実施。福祉業務としては病院、宿泊施設などの運営を行っている。さらには、学校法人基礎調査など私立学校に関するデータの収集・発信もしている。
トップは理事長職で、歴代私立大学の学長経験者が務める。資本金は全額政府出資で、2022年(令和4)3月末時点で1086億7786万3000円。本部は東京都千代田区富士見(ふじみ)。2022年5月時点の日本の私立学校数は2万1625校で、国公私立をあわせた学校に占める私立の割合は、大学で76.8%(620校)、短期大学95.5%(295校)、高等専門学校5.3%(3校)。
[矢野 武 2023年7月19日]
私学助成金
私立の大学、短期大学、高等専門学校などを運営する学校法人に、その経常的経費を助成する国の補助金。私立学校の教育条件の維持・向上、在学生の経済的負担の軽減、経営健全性の向上に役だてる目的がある。文部科学省から日本私立学校振興・共済事業団へ交付され、同事業団が対象や算定方法を定めて全額を学校法人へ配分する。(1)教職員数、学生数、教育・研究費などを基に傾斜配分する一般補助、(2)国の成長力強化への貢献や社会人の受入れなどの取り組みに配分する特別補助、の2種類がある。法令違反や入試の公平性を害した法人には、減額や不交付などのペナルティーを科す。18歳人口が減少する一方で、私学助成金はほぼ横ばい状況が続いており、政府は大学改革を進めるため、2013年度(平成25)から教育改革や地域発展に寄与した法人を対象に増額配分する「私立大学等改革総合支援事業」を導入。2023年度(令和5)からは、デジタルや人工知能(AI)などの人材育成のため学部再編を促す目的で、理工系学部に手厚く配分するよう配分基準を改めた。
2022年度の交付対象は大学583、短期大学270、高等専門学校2の合計855校。交付総額は一般補助2766億2422万円、特別補助213億8324万円(東日本大震災復興特別会計分1億4778万円含む)の計2980億0746万円。1校当りの平均額は、大学が4億8581万円(学生1人当り14万2000円)、短期大学5389万円(同15万円)、高等専門学校1億1303万円(同13万8000円)。不祥事などで3法人3校は減額、3法人5校は不交付だった。
[矢野 武 2023年7月19日]