2年または3年の短期の高等教育機関で、中等教育修了者ないしは成人を対象として、一般教育と専門職業技術教育の完成教育、四年制大学への進学課程、ないしは成人の継続教育を提供する大学。アメリカではジュニア・カレッジまたはコミュニティ・カレッジとよばれる。
日本では、第二次世界大戦後の学制改革に伴い、旧制専門学校のうち、新制大学の基準に満たない学校が短期大学として再編成され、学校教育法の一部改正によって、1950年(昭和25)4月から暫定的な措置として発足。当初149校存在した。1956年に文部省(現、文部科学省)は、中央教育審議会の答申に基づいて、短期大学を恒久的なものとして認め、「深く専門の学芸を教授研究し、職業又は実際生活に必要な能力を育成することをおもな目的」とした。現行制度は、さらに1975年に制定された短期大学設置基準にも基礎を置いている。2022年度(令和4)の統計によると、短期大学309校のうち295校(95.5%)、学生数9万4713人のうち8万9603人(94.6%)と圧倒的多数を私学が占めていること、また、女子学生が、8万2767人(87.4%)と大多数を占めていることも、他国にみられない特色となっている。専門の学科別では教育科が35.8%ともっとも多く、ついで家政17.9%、社会10.5%、保健9.5%の順で、教育・家政科を中心とするものの、保健関連の専門ないしは準専門職業人をも養成している。1991年(平成3)施行の改正学校教育法により、短期大学卒業者に準学士の称号、さらに2005年(平成17)の改正により、この称号にかわって、短期大学士の学位が与えられることとなった。
1990年代以降、少子化の影響を受け、18歳人口の減少に伴って、定員割れの短期大学、および廃校する短期大学も毎年数校みられる。
第二次世界大戦後、欧米諸国でも短期short-cycleの高等教育が注目され、とくにアメリカでは、コミュニティ(ジュニア)・カレッジを中心に、地域の青年や成人を対象に、一般教育、職業教育、進学教育、成人教育、拡張教育が実施されている。
[金子忠史 2023年8月18日]
『田中久子・森本武也著『アメリカの短期大学――コミュニティ・カレッジ』増補版(1980・研成社)』▽『金子忠史編『短期大学の将来展望――日米比較を通して』新版(1994・東信堂)』▽『高鳥正夫、舘昭編著・清水一彦他著『短大ファーストステージ論』(1998・東信堂)』
2年または3年制の大学。略称,短大。第2次世界大戦後の教育改革により大学は4年制を原則とすることになったが,その基準に達せず,しかも価値ある旧制専門学校を存続させるため,アメリカのジュニア・カレッジ制度を参考に1950年度から暫定的制度として発足した。その発足には,実際的な専門職業教育や中堅的社会人養成の要求も反映していた。その後〈専科大学法案〉が国会に上程されるなど短期大学の性格をめぐって曲折があったが,大学の制度的枠内での存続を望む関係者の要望と短期大学教育への社会的要求によって,64年大学の一種として恒久化された。しかし学部をおかず学科制をとること,大学院を設置できないこと,卒業生に学士号が与えられないことなど,4年制大学とは差異がある。1960年代におもに女子の高等教育機関として発展し,65年には369校,学生数約14万7000人に,さらに78年には519校,約38万人,96年には598校,約47万人にも達した。女子学生の割合も年々増加し,1980年には89%,96年現在90%になっている。また短期大学では私立の占める割合がきわめて大きく,学校数で80%以上,学生数では90%を超えている。設置されている学科の構成にも大きな特徴があり,家政系,人文系,教育系(教員養成)で全体の約7割を占め,8割以上の学生がこれら3分野に集中している。1975年に短期大学設置基準が文部省令として整備され,多様で弾力的な制度運用が可能になったが,地域社会の多面的な教育要求や生涯教育との関係で個性的な発展が求められている。
→大学
執筆者:田中 征男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
学校教育法(昭和22年法律第26号)は,職業または実際生活に必要な能力を育成することなどをおもな目的として,修業年限を2年または3年とする「短期大学」を置くことができると規定する(108条)。短期大学には学部でなく学科を置くこととされ,大学院を置くことができない。当初,第2次世界大戦後,教員組織や施設・設備等が不十分で4年制の新制大学への転換が認められない旧制専門学校等のため,アメリカ合衆国のジュニア・カレッジ(アメリカ)(junior college)を参考にして,学校教育法の改正により,1950(昭和25)年度から暫定的措置として設けられた。中級技術者養成機関として再編する構想もあったが,その役割を担う高等専門学校制度が別に創設されたこともあり,1964年の法改正により,大学の枠組みの中で恒久的に制度化された。
短期間で修了可能な実際的高等職業教育機関として地域に密着しながら,とくに女子の高等教育の場として発展し,ピーク時には学校数598校(1996年),学生数約53万人(1993年)を数え,高等教育のファースト・ステージとしての役割も期待された。しかし,少子化に伴う18歳人口の減少や学生の9割近くを占める女子の4年制大学志向等により,近年は学校数,学生数とも大きく減少している(2016年:341校,約12万8000人)。ニーズが薄れたとの指摘もある中,各機関がいかに各自のミッションと特色を打ち出して機能分化を図っていくのかが問われている。
著者: 寺倉憲一
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報
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※「短期大学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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