秘密売春を行う店。そこで稼ぐ女性を曖昧女(おんな)とよんだ。明治時代に用いられた語。非合法とはいえ暗黙の了解のもとになかば公然であった芸妓(げいぎ)や酌婦の売春は除かれる。それ以外の売春宿のことで、対象範囲や業態は文字どおり曖昧であった。秘密ではあっても人の出入りが不自然でないように、飲食店(麦とろ、汁粉屋、銘酒屋)や遊戯場(矢場、碁会所)に擬装し、抱え女に売春させた。また、裁縫稽古所(けいこじょ)、いけ花教授所の看板を掲げて女性を集め、下級待合などへ派遣する形態もあった。少数の高級私娼(ししょう)を曖昧女という例もあるが、一般には下級に属して料金も安く、ときに美人局(つつもたせ)に類する詐欺行為を生じた。
[原島陽一]