有耶無耶関(読み)うやむやのせき

日本歴史地名大系 「有耶無耶関」の解説

有耶無耶関
うやむやのせき

平安期から多くの歌などに詠まれた関所で、「いやむや」「ふやむや」「むやむや」「もやもや」などの異称でもよばれた。「義経記」にみえる伊那いなの関は当関と同一のものとする説もある(大日本地名辞書)。比定地として笹谷ささや峠付近のほかに、鳥海山西麓の現飽海あくみ遊佐ゆざ吹浦ふくらの字岩山いわやま、同町女鹿めが大師たいし(三崎峠)付近、現酒田市せきなどがあげられる。しかし当関をかつて陸羽国境にあった関所と考えると、比定地は両国を結ぶ古代の官道が越えたとされる笹谷峠付近とみるのが妥当であろう。

有耶無耶関
うやむやのせき

平安時代から歌に詠まれた関所。「いやむや」「ふやむや」「むやむや」「もやもや」などともよばれた。永久四年(一一一六)歌合源俊頼が「すぐせやななぞいなむやのせきをしもへだてて人にねをなかすらん」(散木奇歌集)と詠んだのが早い。「八雲御抄」は「むやむやの関」を出羽とする。「もののふのいづさいるさにしをりするとやとやとほりのむやむやの関」(夫木抄)を証歌にあげ、「陸奥・出羽の中に行かよふ山あり。

有耶無耶関
うやむやのせき

「和歌初学抄」「八雲御抄」などの歌学書に名所として記された古関。その位置については、せき村とする説と三崎みさき山との説があり、また陸奥・出羽国境(宮城・山形県境)の現笹谷ささや峠をあてる説も有力である。元禄二年(一六八九)の曾良随行日記に「小砂川、御領也(中略)塩越三リ、中途ニ関ト云村有、ウヤムヤノ関是より六郷庄之助殿領成ト云」とある。また、天明四年(一七八四)この地を訪れた菅江真澄は、「此関むらこそいにしへのうやむやのせきあとならめ、三崎山の地獄谷の辺とは人のいひあやまちたらんか」(秋田のかりね)と記している。同八年の庄内御預所由利郡拾壱ケ村御案内帳にも「関村いなむやの関と申古跡ニ御座候」とある。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

世界大百科事典(旧版)内の有耶無耶関の言及

【笹谷峠】より

…奥羽山脈をこえて仙台市と山形市を結ぶ笹谷街道(国道286号線)の分水界で,標高906m。峠の南東500mに古歌で知られる有耶無耶関(うやむやのせき)跡がある。近世には通行が盛んで米,麦,ベニバナなどが運ばれ,笹谷(宮城側),関沢(山形側)は峠集落としてにぎわった。…

※「有耶無耶関」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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