改訂新版 世界大百科事典 「未定係数法」の意味・わかりやすい解説
未定係数法 (みていけいすうほう)
method of indeterminate coefficients
有理式,を部分分数に分解することを考えよう。それには,と展開できたとして,
であるから,係数を比較して,
A+B=2,C-3B=-1,
5A-3C=-1
であればよい。この一次方程式を解くと,A=1,B=1,C=2であるから部分分数展開,を得る。このように求めたい係数を未知数にしておいて,それらが満たす条件からその係数を決める方法を未定係数法という。次にこの方法の応用例をいくつか示そう。
因数分解
多項式,
f(x,y)=2x2+3xy-2y2+5x+5y+3
を因数分解することを考えよう。それには,
f(x,y)=(ax+by+c)(dx+ey+f)
と分解できたとして,係数a,b,c,d,e,fを決めればよい。ここで,これらの係数は整数としてよい。x2の係数を比較して,ad=2であるから,a=1,d=2としてよい。xyとy2の係数を比較してbe=-2,e+2b=3を得,これからb=2,e=-1と定まる。次にx,yの係数および定数項を比較して,c=1,f=3が決まり,因数分解,
f(x,y)=(x+2y+1)(2x-y+3)
が求まる。因数分解は簡単な場合はこの方法でできるが,一般にはむずかしい。
微分方程式
微分方程式,
を考えよう。解がy=a0+a1x+a2x2+……の形の展開をもったとすると,
n(n-1)an=-an-2 (n≧2,a0=1,a1=1)
でなければならない。これから,
が得られるが,級数,は収束して,微分方程式の解sin xを与える。
ラグランジュの未定係数法
二つの2変数関数f(x,y),g(x,y)に対して,g(x,y)=0という条件の下でf(x,y)の極値を求めることを考える。ここでf,gについての微分可能性の条件と,を仮定する。このときfが(x0,y0)で極値をとるとすると,あるλ0があって,(x0,y0,λ0)はx,y,λの方程式,
の解になっているから,これを解けばよい。このようにして(x0,y0)を求める方法をラグランジュの未定係数法という。
執筆者:斎藤 裕
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報