改訂新版 世界大百科事典 「村絵図」の意味・わかりやすい解説
村絵図 (むらえず)
日本の近世に村ごとに作られた各種の地図。彩色のものが多い。大きさは30cm×40cm程度から3m×5m程度までさまざまであるが,だいたいは数十cm四方のものが多い。縮尺は600分の1程度のものが多かったとされている。現在の地図のように北が上に描かれるとは限らないが,東西南北はわかるようになっている。検地にあたって,検地帳とともに作成されることになっていたようだが,寛永(1624-44)以前のものは残存量がごく少ない。村絵図には村の景観全般を描いたものと,必要な部分だけを描いたものがある。全般図には,田畑屋敷,道橋,川や用水,主要堂社などがそれぞれ別色で表現されている。部分図は問題のある部分だけを描示したもので,例えば堤を修理する場合には,必要な部分だけが細かく描かれている。村と村との係争が裁判になった場合,領主が裁許状裏書に描いた裁許絵図も部分的村絵図といってよい。村絵図は多くの場合絵図師といわれる専門家が描いた。
執筆者:木村 礎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報