改訂新版 世界大百科事典 「町絵図」の意味・わかりやすい解説
町絵図 (まちえず)
近世の農村の状況を描いた村絵図に対して,城下町,港町など近世都市の町人居住地を描いた絵図を町絵図と呼ぶことがある。その内容は街路形態と街路に沿って配される町の形状および町名が記された町割図(町割)が多く,これには下水溝や町境に置かれる木戸,番屋,町役人の詰める役所などの位置が記される場合もある。町内の個々の屋敷割までも書きこんだ屋敷割図も町絵図の一種で,この場合は大坂の水帳絵図や江戸の沽券(こけん)絵図のように一筆ごとの間口・奥行き寸法や坪数,地主名などが書きこまれることが多い。宿場の街道に沿って建ち並ぶ旅籠など一軒ごとの間取りなどをも記した宿絵図のように,屋敷内の建物までも描いた町絵図もある。これらは多くの場合,町奉行など都市支配者が支配の必要から作成させる場合が多いが,町人の側で作る場合もあり,三都のような大都会や,長崎,堺,新潟など人々の集まる町で刊行されることもあった。
執筆者:玉井 哲雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報