東アジア共同体(読み)ヒガシアジアキョウドウタイ

デジタル大辞泉 「東アジア共同体」の意味・読み・例文・類語

ひがしアジア‐きょうどうたい【東アジア共同体】

ASEANアセアン加盟国に日本・中国・韓国を加えて新しい地域共同体を作り、貿易・投資・安全保障など各分野での連携を強化しようという構想。1990年、マレーシアのマハティール首相の提唱に始まる。EAC(East Asian Community)。

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百科事典マイペディア 「東アジア共同体」の意味・わかりやすい解説

東アジア共同体【ひがしアジアきょうどうたい】

ASEAN東南アジア諸国連合,10ヵ国)+3(中国,日本,韓国)を中心に経済・安全保障など幅広い分野で地域協力をすすめ,地域統合をめざす構想。1997年以降のアジア通貨危機の経験やヨーロッパ統合の進展などが背景にある。1998年第2回ASEAN+3の首脳会議で韓国の金大中大統領は経済危機克服のために〈東アジア経済協力ビジョン・グループ〉設立を提案,2001年第5回同会議でのビジョン・グループ報告書は,経済協力,財政金融協力,安全保障上の協力,環境・エネルギー協力,社会・文化・教育協力などを掲げた。その後,曲折をへて2003年〈日本・ASEAN特別首脳会議〉は〈東京宣言〉を発し,ASEAN+3の枠組みを将来の共同体に発展させることを確認し,将来の共同体構築を視野に第1回の〈東アジア・サミット〉が2005年12月マレーシアで開催された。2009年8月の衆議院総選挙で,政権交代を果たして発足した鳩山由紀夫内閣で,鳩山首相は,就任直後の同年9月,中国の胡錦濤主席との日中首脳会談で東アジア共同体構想を提唱,韓国の李明博大統領との会談でも同趣旨の構想を提示し,東アジア重視の外交姿勢を打ち出した。しかし,その後民主党・鳩山政権の外交は沖縄普天間基地問題で日米関係に齟齬を来たして足を取られ,東アジア外交は停滞,中国,韓国も際立った反応を見せず,民主党政権末期の2012年には竹島問題尖閣諸島問題で逆に緊張が一気に高まるなど,東アジア共同体構想は完全に頓挫した。→東北アジア
→関連項目日本

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知恵蔵 「東アジア共同体」の解説

「東アジア共同体」

このところ「東アジア共同体」に関する論議が盛んである。2005年12月にはマレーシアで「東アジア共同体」をめぐるサミットも開かれた。しかし、おおむね肯定的な意見が多い学界やマスメディアなどの議論をみると、東アジアの現実から大きく乖離(かいり)した、楽観的な言説や待望論が多い。それらの論議の大部分は、いまや東アジアには共通の大きな経済実態が存在しており、域内貿易額は約60%と、EU(欧州連合)のそれを凌駕しているという経済的相互依存関係の進展を背景にしたものである。だがこの地域には、日中間の「政冷経熱」現象をみるまでもなく、経済中心の制度面や機能面でいくら問題を論じても意味をなさないほどの、政治的、文化的、さらには地政学的な問題が内在している。だからこそ、東アジアの全体像を体系的にとらえる視点が不可欠だといえよう。 東アジアの現実を地政学的にとらえれば、大陸国家・中国の大陸性(continentality)、半島国家・韓国の半島性(peninsularity)、そして海洋国家・日本の島嶼性(insularity)がせめぎあっているということができよう。そこには、容易に一致し得ない文化的・文明的違和が存在する。しかも、近代史における歴史的体験の違いや、歴史認識の蓄積の違いが極めて大きい。 「東アジア共同体」の構想では、日本はASEAN10カ国プラス日中韓、オーストラリアニュージーランド、インド(ASEAN+6)を、中国はASEAN10カ国プラス日中韓(ASEAN+3)を主張している。しかし、そこでの政治的、社会的な課題を棚上げした形での「東アジア共同体」の実現は無理ではなかろうか。

(中嶋嶺雄 国際教養大学学長 / 2008年)


東アジア共同体

欧州のような政治経済統合を東アジアでも適用しようという共同体構想。2005年12月、クアラルンプールでの東アジアサミットでもこれを目指すことが確認された。しかし、枠組みをASEAN+3(日中韓)とする中国とインド、オーストラリアを加えたい日本とで意見は分かれ、実際の構築は先送りされた。もともと宗教、民族、体制などで多様性が欧州より著しいこの地域だが、ASEANが経済を中心とした地域協力を進めた。1990年代後半のアジア通貨危機以降この動きが加速され、金融協力の推進など多国間の枠組みに中国も含め積極的となってきた。サッカーなどのスポーツ交流や文化的な交流、インターネットなどの通信網の拡大も顕著となった。一方で、統合が困難に逢着(ほうちゃく)する中、歴史認識問題や高まるナショナリズムへの不安も存在する。05年インドなどがオブザーバー参加した中ロ、中央アジアの上海協力機構や、6者協議といった東アジアの安全保障組織との関連はまだ不明確であるし、米国もこの構想に批判的であるといった政治的懸念もある。特に経済面ではこの機構がFTA・EPAなど、東アジアで有力な2国間ベースの動きとどう結び付くかが課題であろう。

(高橋進 東京大学大学院法学政治学研究科教授 / 2007年)

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