ASEAN経済共同体(読み)あせあんけいざいきょうどうたい(英語表記)ASEAN Economic Community

共同通信ニュース用語解説 「ASEAN経済共同体」の解説

ASEAN経済共同体

東南アジア諸国連合(ASEAN)経済共同体 「経済」「政治安全保障」「社会・文化」の3本柱で構成されるASEAN共同体の中核略称AEC。2006年にASEAN経済閣僚会議が15年までに創設することで合意した。関税撤廃や税関手続きの簡素化、一部労働者の移動の自由化を進める。欧州連合(EU)とは異なって国境管理は残り、ユーロのような単一通貨の導入も予定されていない。(共同)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ASEAN経済共同体」の意味・わかりやすい解説

ASEAN経済共同体
あせあんけいざいきょうどうたい
ASEAN Economic Community

ASEAN(東南アジア諸国連合)に加盟する10か国が域内の人、物、サービスの自由化を進める地域経済圏。2015年12月末に発足した。英語名の頭文字からAECともよばれる。2014年時点で、域内の総人口は約6億2000万人、域内総生産(GDP)は2兆5700億ドルに達する。AECは、(1)発足時に9割超の産品で実施した域内関税の撤廃を2018年までに原則として完全実施し貿易を自由化する、(2)金融や小売り分野などに対する外資規制を緩和し、サービス市場の相互開放を進める、(3)熟練労働力の移動自由化を進める、などの目標に取り組む。将来はASEAN全域を対象に「単一市場」と「単一生産地」を形成し、域内産業の競争力向上と外資導入を目ざしている。しかしASEAN各国は一人当りのGDP、所得、企業規模など経済発展の度合いに大きな差があるため、統一ルールで経済統合を進めるのはむずかしい。このためヨーロッパ連合(EU)などとは異なり、AECは緩やかに自由化を進めており、通貨統合や対外統一関税は実施しない。また内政不干渉が原則で、合意事項の実施に法的拘束力はなく、自由化ルールの運用は各国にゆだねられている。

 AECは1997年のアジア通貨危機を機に創設の機運が高まり、2003年にEUのアジア版として構想された「ASEAN共同体」の一環として設立が表明された。当初、2020年の発足を目ざしたが、2015年末に前倒しされた。なお、ASEAN共同体は経済共同体のほか、政治・安全保障共同体(APSC:ASEAN Political-Security Community)と社会・文化共同体(ASCC:ASEAN Socio-Cultural Community)からなるが、同構想は遅々として進んでいない。

[矢野 武 2016年8月19日]

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