日本大百科全書(ニッポニカ) 「東西両ドイツ基本条約」の意味・わかりやすい解説
東西両ドイツ基本条約
とうざいりょうどいつきほんじょうやく
「ドイツ連邦共和国とドイツ民主共和国との関係の基礎に関する条約」を正式名称とし、1972年12月21日、当時の東西両ドイツにより調印された条約。発効は73年6月21日。この条約で東西両ドイツは、相互間の関係が主権的、独立的な国家間の関係であることを公に確認し、「相互に正常な善隣関係を発達させる」(第1条)ことを約束した。
条約は前文と全10か条からなり、両国は第2条で、「国連憲章に記されている目標と原則……を行動の指針とする」ことを誓約している。また両国は第3条で、「紛争をもっぱら平和的手段で解決し、武力による威嚇または武力の使用を放棄する」こと、および「現存する両国間の国境の不可侵性を現在および将来にわたって確認し、それぞれの領土保全を無条件に尊重する」ことを誓い合っている。とくに重要なことは、第4条が「いずれの国も、国際的に他方を代表し、もしくは他方にかわって行動することはできない」と規定し、西ドイツが従来行ってきた唯一代表権の主張に関し、その放棄が公式に表明されていることである。しかしそれにもかかわらず西ドイツは、依然「一民族二国家論」の立場をとり、東ドイツを「外国」とはみなしていなかったため、両国の間には、通常の「大使」ではなく、「常駐代表」を交換することが規定された(第8条)。また、本条約は第7条で、経済、科学・技術、交通、郵便・通信制度、保健、文化、スポーツ、環境保護その他の分野での協力を規定し、本条約発効後の1973年9月両国はともに国際連合への加入が認められた。しかし、90年10月のドイツ統一以後、本条約は実際的意味を失ったといえよう。
[深谷満雄]