翻訳|ambassador
外交使節の最高の階級。臨時外交使節としての大使と常置外交使節としての大使がある。前者が国家を代表して外国での儀式や臨時の会議に出席することを目的とするのに対し,後者は,正式には特命全権大使といい,接受国に駐在し,派遣国を代表して接受国政府と外交交渉を行うこと,接受国に発生する事項の中で派遣国の利益に影響のあるものを観察して派遣国政府に報告すること,接受国にある派遣国国民とその財産および利益を保護することをおもな職務とする。普通,大使といえば後者のことである。
国家間の機関として国家が外交使節を派遣しこれに特別な待遇を与えることは,エジプト,ギリシア,ローマの古代から行われていたが,宗教的色彩が強く,すべて一時的であった。常駐的な外交使節は中世末期にイタリア諸都市国家が相互に代表者を交換するようになったことに始まり,近代国際社会の成立とともに,しだいにスペイン,フランス,ドイツ,イギリス等の他のヨーロッパ諸国間に採用されるようになった。階級の区別は,常置使節の制度の一般化につれて行われるようになった。現在,常置使節には,大使のほかに特命全権公使と代理公使がある。公使は大使に次ぐ地位(特命全権公使のほうが代理公使より上位)であるが,大使との差異は,席次と儀礼についてのみ存在し,職務と特権については存在しない。また,特定の国にどの階級の使節を派遣するかは関係国間の合意で定められるが,通常,密接な関係を有する国家間では大使が派遣される。
なお,日本では,大使の任命は,外務大臣の申出によって内閣が行い,これを天皇が認証する。また,日本に赴任してくる大使の信認状は天皇が認証する。
→外交官 →公使
執筆者:野村 一成
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第一の階級の外交使節。常駐外交使節と臨時外交使節の場合があるが、普通に大使という場合は、前者の常駐の外交使節、すなわち特命全権大使のことである。「特命」の用語は、当初は、特別の任務をもって臨時に派遣される使節に用いられたものであるが、17世紀の後半に常駐の使節に用いる慣例が生じた。18世紀になって、使節に種々の階級と名称が用いられるようになり、「特命」の用語は他よりもより上位の階級・席次を主張するために付加されるなど、使節の階級・席次をめぐってしばしば争いが生じた。19世紀になって、使節の階級・席次に関する規則が定められ、「特命」が付加されても上位の席次を有しないことが明確にされ、大使は特命全権大使であるとされた。大使と他の使節(公使、代理公使)とでは、階級と席次について儀礼の点で異なるが、任務・特権の点では異ならない。当事国間でどのような使節を交換するかは合意によって決められるが、かつては、大使は大国相互間、公使は大国と小国との間や小国相互間に交換されるのが慣例であった。たとえば、わが国が大国との間で大使を交換したのは日露戦争後のことである。しかし、しだいにこのような慣例はなくなり、第二次世界大戦後、とくに1960年代以降、ほとんどの国の間で大使を交換するようになり、公使の交換は例外的になった。
[広部和也]
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…この当時,国家の対外政策の目的とは,国王の版図の拡大であり,国王の財源の増大であり,国王の栄光の発揮であった。外交官はこの目的の実現に奉仕すべき臣下であり,全権大使とは他国にあって国王を代理して交渉の任にあたるものとされたのである。〈宮廷外交〉の時代には,秘密外交方式は当然のこととされ,他国の国情のスパイから,宮廷内の反対派を籠絡(ろうらく)する陰謀工作や,軍事力の威嚇を用いる一方,賄賂や地位で誘う〈ムチとアメ〉の策略が使われるなど,多様な外交戦術が駆使された。…
…一国から他の国へ派遣される外交使節団の長を意味する場合と,大使を長とする外交使節団において大使に次ぐ地位の者を意味する場合とがある。前者が本来の意味であるが,今日では前者の意味での公使はほとんど存在せず,公使の名称はおもに後者の意味に用いられる。…
※「大使」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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