改訂新版 世界大百科事典 「林業労働」の意味・わかりやすい解説
林業労働 (りんぎょうろうどう)
林業労働は造林,伐出などの生産労働が主で,ほかに樹苗養成労働,保護労働,治山工事などの保全労働がある。主として男子労働によるが,苗木の運搬,苗木養成などの軽労働は女子労働によることもある。木材の生産だけでなく,シイタケ,ナメコなどのキノコ類の生産,ワラビ,ゼンマイなどの山菜の採取労働についても女子労働の関与する部面は大きい。造林労働は地ごしらえ,植付け,下刈り,枝打ち,間伐などに分かれ,機械化は下刈りを除き多くない。伐出労働は重労働であり,チェーンソー,集材機,トラック運搬など機械化が最も進んだ作業である。機械により労働節約が図られた反面,チェーンソーによる振動病(白蠟病(はくろうびよう))などの障害も生まれている。また山地作業のため作業環境が悪く,林業労働災害の度数率(100万延べ実労働時間当たりの労働災害による死傷者数)は9.99で全産業(平均1.88)中最も高い(1995年)。森林の多い農山村では,林業労働は重要な雇用の場となっているが,近年は山腹の荒廃を防ぎ,レクリエーション施設をつくり,緑化樹を植え,環境を整備する労働が増え,それによる雇用機会も多くなっている。労働条件についてみると,季節的な繁閑があり通年雇用の難しい林業生産労働では,労働条件を他の労働,たとえば土建労働と同一水準にすることは容易でない。農山村では林業労働が土建労働と労働市場を同じくすることが多く,山林保全のためにも労働条件を有利にすることの必要性は高い。森林組合の作業班では,労働条件は少しずつ整えられてきている。林業生産労働の組織化は公有林,私有林では進んでいない。労働量は少量で分散し,野外労働で通年化できないなどの条件があるからである。女子労働についてはほとんどが家族内労働である。
執筆者:筒井 迪夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報