女子労働(読み)じょしろうどう

百科事典マイペディア 「女子労働」の意味・わかりやすい解説

女子労働【じょしろうどう】

社会的産業への女子の大量進出各国とも産業革命期に始まり,日本では19世紀末から紡績製糸業への進出が始まった。当初女子労働は児童労働とともに激しい搾取の対象とされたが,その後工場法制定など法的保護が加えられ,絶対数の増大,職業分野の拡大,労働運動やフェミニズム運動の発展などにより女性の社会的地位も向上した。母性保護観点から国際的にもILO条約が採択されている。日本では労働基準法休暇育児時間や生理休暇の設定等による母性保護を規定。1991年には育児休業法(1995年〈育児・介護休業法〉に改正)が定められた。また労働基準法では時間外労働の制限,深夜業の禁止なども規定されていたが,近年の状況の変化に鑑み,これらに関しては解消する方向で議論が進められている。勤労婦人福祉法(1972年)の改正法として1985年には男女雇用機会均等法成立したが,罰則規定がないため十分効力を発揮しておらず,採用や待遇における男女差別の禁止規定を強化した男女雇用平等法の制定が望まれ,1997年6月に改正〈均等法〉が成立した。男女雇用機会均等法の成立で,労働基準法上の女子保護規定が撤廃されることになった。国は女子労働が置かれている状況の改善を,男女雇用機会均等法の改正を軸に進めているが,男女雇用機会均等法以外でも,育児・介護休業法,次世代育成支援対策推進法などの法整備を図っている。しかし,ダボス会議などで知られる世界経済フォーラムが発表する男女平等ランキング(2013年)では,日本は105位で,中国(69位),イタリア(71位)などよりも遙かに下位となっており,女性の地位向上に更なる法整備・制度改革が早急に求められている。なお日本の女性の労働力人口は2632万人,生産年齢(15〜64歳)の労働力人口は2419万人である(2011年)。生産年齢の労働力率は63.0%。また女性の就業者数は2523万人,一方,完全失業者数は109万人(2011年)。
→関連項目フェミニズム

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「女子労働」の意味・わかりやすい解説

女子労働
じょしろうどう

婦人労働ともいう。女性の雇用・賃労働をいう。産業革命以後の機械制生産による技術体系のなかで女性の労働市場が成立,日本では主として繊維工業で 1890年頃出現した。女子労働は低賃金・長時間労働として導入され社会問題化したため,1833年にイギリスで工場法が実施されたのをはじめ国家による労働保護立法が試みられた。 1919年に設置された国際労働機関 ILOでは,週 48時間制などとともに女性の深夜業の禁止を定める条約が採択された。日本でも当初『女工哀史』にみられるように 12~18時間労働・深夜業・体罰による能率アップなど苛酷な実情であり,16年実施の工場法で保護規定が設けられたが,人身売買的な雇用契約などの禁止にはいたらなかった。第2次世界大戦後,労働基準法により男女同一賃金の原則,危険・有害業務の就業制限,深夜業禁止,産前産後の保護などが定められた。近年は女性の職場進出が著しく,男女雇用機会均等法育児休業法の施行など,単なる保護から女性の地位向上,男女平等の実現に政策の重点が移されている。

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改訂新版 世界大百科事典 「女子労働」の意味・わかりやすい解説

女子労働 (じょしろうどう)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「女子労働」の意味・わかりやすい解説

女子労働
じょしろうどう

女性労働

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世界大百科事典(旧版)内の女子労働の言及

【女性労働】より


[特質と男女差別]
 産業革命による機械制大工業の成立は,一方で機械が熟練や体力を不要にし,他方で家計補助の必要から,労働者家族の労働力の窮迫販売を余儀なくさせたことにより,女性の賃労働化に決定的意義をもった。一般に女性の労働が家計補助的労働であり,また男子労働者に比べて自己の要求を主張し実現する力が弱いことから,資本は低賃金や過度労働を強いることが可能となり,賃金をはじめ一般的な労働条件を引き下げる効果をもった。…

※「女子労働」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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