造林した樹木が生長するにつれて枝が互いに触れあうようになると,隣りあった樹木の間にせり合いが起きるようになる。せり合いが激しくなる前に,目標に合った健全な林を育てるため,一部の樹木を切ることを間伐という。早い時期に造林目的以外の樹種,形の悪いもの,枯れたものなどを切ることを除伐または捨て伐(ぎ)りという。除伐や初期の間伐は収支がつぐなわないのが普通であるが,最終的な伐採までに長期間を要する林業経営において,間伐は中間的な収入をあげるよい機会となる。林を構成する樹木の枝が互いに完全に触れあってすきまがなくなると,面積当りの葉の量は樹種によってほぼ一定となるから,1本の木の葉量も一定となり,したがって光合成量もほぼ一定となる。一方,樹木は年々高くなるので幹の太り方が少なくなり,太さのわりに高い木となり,風や雪に弱くなり,材木として利用する場合にも不利となる。一方せり合いに負けた劣勢な木にはしだいに光が当たらなくなり,生長が衰えてついには枯れるようになるが,この現象を自然間引きという。
間伐にあたっては,どのような木をどのくらい切るかを決める。どのような木を切るかをまず決め,その結果として切る本数が決まる方式を定性的間伐と呼んでおり,間伐を行う林の中の木を生長・樹型を基準にして仕分ける。仕分け方にはいろいろあるが,例えば優勢木を第1~2級木に,劣勢木を第3~5級木に分け,第2級木を5細分する方法がよく使われている。各級および細分の基準によって対象とする林の中の木を仕分け,間伐の目標に従ってどの区分のものまで切るかを決める。一方,間伐する本数を決め,それに合うように間伐する木を決める方法を定量的間伐と呼んでいる。実際に切る木は,列あるいは列の中の位置などによって機械的に決めるのが普通であるが,生長・樹型も考慮にいれることが多い。近年,林の中の木の平均高,胸の高さの幹の平均直径ごとに,ha当りの木の本数と幹の材積の関係を表した林分密度管理図が作製され,これを指針にして間伐が計画的に行われるようになった。間伐の程度と回数の兼合いは,1回に多く切って回数を少なくする方が経済的には有利であるが,1回に多く切ると面積当りの葉の量が急に減少して林としての生産量が減少するし,急に空間をあけすぎると風や雪に弱くなり,また林の中の環境が急変することによる悪影響も起きやすくなる。また樹種,樹齢,土地の条件などによって,新たにつくられた空間にむけて枝葉を広げる速さも異なるから,これらの条件を総合的に勘案して間伐の程度と回数を決める。なお以前は,最後に林全体を切るまでの全生産量は間伐によって多くなると考えられていたが,現在では間伐をしても全生産量はほとんど変わらないとされている。
執筆者:浅川 澄彦
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皆伐一斉林施業における主伐に対する対語で、主伐に至るまでの保育や途中収穫の伐採である。一斉林とは同齢の林のことであり、主伐とは最終的にまとめて伐(き)る伐採である。しかし主伐をしないで非皆伐の択伐林施業に誘導していく過程でも間伐は行われる。施業とは伐採などを伴う森林の取扱いのことである。
間伐とは、(1)森林が混みすぎて不健全になるのを防ぐ作業、(2)良い木を育て森林の価値を高める作業、(3)適時に収穫をし、定期的な収入を可能とする作業、である。
(1)の混みすぎて不健全というのは、個体の樹冠量が小さくなり、細長い木の集団となって強風や冠雪などの被害を受けやすくなることと、林冠が強く閉鎖して林内の光が不足し、林床の下草が乏しくなり、土壌保全の点から好ましくないことである。林冠とは樹冠の連なったものである。(2)の良い木を育てるということは、できるだけ幹の通直性が高く、傷のない木の比率を高めていくことを基本とし、丸太をとるときの、丸太の下と上の太さの差が小さく、無節性が高い木を育てていくということである。
間伐は、好ましい形質の木を育てるために、生育段階に応じて必要な樹冠量を個々の木に与えていくための作業である。そして単位面積当りの限られた葉量を、できるだけ将来性のある木に配分していこうとする作業である。そのような前提のなかで、条件の許す限りそれぞれの間伐時点で間伐材による間伐収入が高まるように伐る木の選木をしていくことが大事な作業である。
[藤森隆郎]
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…耕地にあらかじめ多くの種子をまいておいて,幼植物の期間に一部を除去して適正な密度にすること。作物が生産の目的に合った生育をするように,各個体に一定の生育空間を与えるために行う。多くの作物の場合,間引きを行わなくても面積当りの総生産重量は大きくは変わらないが,各個体の重量が小さくかつ変異が大きくなるので,ハクサイ,ダイコン,ニンジンなどの野菜類では商品になるものの割合が極端に低下するし,テンサイでは収穫機が使えなくなったりするため,間引きは必須の作業となっている。…
…後者の苗木を山引(やまびき)苗とよんでいる。 植樹造林の手順は,植栽材料の選定,植付本数の決定,苗木の育成,地ごしらえ,植付補植で,このあとに他の造林法にも共通な手入れとして下刈り,つる切り,除伐,枝打ち,間伐がある。(1)植栽材料の選定 造林予定地またはその周辺にもともとある樹種,品種あるいは系統を用いる場合は問題ないが,新しい材料を用いようとする場合には,予定地の環境条件(気候,気象,地形,土壌など)を調べ,それらに最も適したものの中から,仕立てようとする林の目的にかなったものを選定(適地適木)し,林木育種事業で素質,品質が保証された種子または挿穂があればそれらを入手する。…
※「間伐」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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