林業税制(読み)りんぎょうぜいせい

改訂新版 世界大百科事典 「林業税制」の意味・わかりやすい解説

林業税制 (りんぎょうぜいせい)

林業に関する税金の種類には,国税として所得税,法人税,相続税,贈与税,登録免許税,印紙税が,地方税として道府県民税,事業税,不動産取得税,市町村民税,固定資産税,特別土地保有税,事業所税,電気税,木材引取税軽油引取税があるが,森林の公共性,林業生産の長期性,低収益性などの特殊性にもとづき,各種の措置が講じられてきた。そのおもなものをあげると,以下のようなものがある。

 所得税は山林立木)を伐採しまたは譲渡(立木処分)したことによって生じた所得に課税され,税額は〈分離五分五乗課税方法〉という特別の方法によって算定される。山林所得を他の所得と分離し,かつその年の課税山林所得を5で除した額に対応する税額を5倍して課税する方式である。これは山林所得の形成には長期間かかり,かつ所得が一挙に実現するので,累進税率による重課税を緩和するための措置である。また森林施業計画の認定を受けている場合とか,保安林整備臨時措置法にもとづいて山林を手離し代りの森林を取得した場合などには,特例として優遇措置も講ぜられている。相続税は立木の価額評価の際は時価の100分の85とすることとなっているが,保安林などの法令にもとづいて立木の伐採の禁止または制限を受けている場合の林地,立木の評価額は,一定の割合で控除される特例措置が設けられている。法人税は税額算定では特別措置は設けられていないが,造林費の特別償却損金算入),計画造林準備金の損金算入などの優遇措置が設けられている。固定資産税については立木は課税対象外である。特例として保安林は非課税,森林組合および同連合会が所有し利用する事務所,倉庫は非課税などの措置がある。また,投機的な土地売買を抑制し,宅地などの供給を円滑にすることを目的とする趣旨から,林業経営者の規模拡大,団地施業または経営の近代化を図るための林業用地に対しては特別土地保有税が非課税とされる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報