梵学津梁(読み)ぼんがくしんりょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「梵学津梁」の意味・わかりやすい解説

梵学津梁
ぼんがくしんりょう

仏教書。1000巻。慈雲尊者飲光(じうんそんじゃおんこう)(1718―1804)の編述になる。わが国に所伝、保存され、書写・研究されてきたサンスクリット語に関する資料を収集・類別した一大叢書(そうしょ)。総目録は、本詮(ほんせん)、末詮、通詮、別詮、略詮、広詮、雑詮に7分される。第一の本詮にはサンスクリット文の遺策弘法大師(こうぼうだいし)将来42巻、法隆寺、清凉(せいりょう)寺、高貴寺などに所蔵される貝葉(ばいよう)(貝多羅葉(ばいたらよう))九葉を集めてある。第二の末詮には、七仏名、法身偈(ほっしんげ)などの、名号・偈頌(げじゅ)などの諸訳互証の文など97巻を収める。第三の通詮には『梵字悉曇(しったん)章』『悉曇字記』など、サンスクリット学の書物85巻を収める。第四の別詮には『千字文』『梵語雑名』『唐梵文字』など字書類を含む。第五の略詮は摩多母音)・体文(子音)にわたる各種サンスクリット名とその訳注で125巻よりなる。第六の広詮では、仏・法・僧すべてのサンスクリット名、第七の雑詮には以上の補遺、サンスクリット語学の書が集められている。原本大阪府の高貴寺に現存しているが、全体は未開版。『慈雲尊者全集』(1975・思文閣)第9巻の下に目録が掲げられている。

[金岡秀友]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「梵学津梁」の意味・わかりやすい解説

梵学津梁
ぼんがくしんりょう

江戸時代の僧飲光 (おんこう) によって編集されたサンスクリット語学書。約 1000巻。明和3 (1766) 年頃成立と推定される。当時入手しうるかぎりのサンスクリット語写本を集め,7部門に分けている。第1は資料収集,第2は資料の訳読解釈,第3は文法,第4はサンスクリット語関係についての記述,第5はサンスクリット語辞典,第6は項目別に分けて編集された辞典,第7は参考書をあげている。原本は河内高貴寺蔵。

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世界大百科事典(旧版)内の梵学津梁の言及

【慈雲】より

…生駒山双竜庵に隠棲してからも梵学を研鑽,《般若心経》《阿弥陀経》などの梵文を読み,その義解を講説した。梵学の研究成果はのち《梵学津梁(ぼんがくしんりよう)》約1000巻となったが,独力でこれをなしたことは驚異である。54歳で京都阿弥陀寺に住して十善の法を説き,《十善法語》12巻に筆録された。…

※「梵学津梁」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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