日本大百科全書(ニッポニカ) 「楕円積分」の意味・わかりやすい解説
楕円積分
だえんせきぶん
Q(x)をxの三次または四次の式として、またR(x,u)をx、uの有理式として、
の形の不定積分で、初等関数(代数関数、指数関数、対数関数、逆三角関数など、微分積分学では基本的であると考えられる関数)で表すことのできないものを楕円積分という。楕円の弧長の計算に際して現れる積分なのでこの名がある。実際、楕円
の弧の長さは、たとえば のBからPまでだと、
となり、k≠0ならば、初等関数で表すことはできない。このような積分は19世紀初めごろから注目された。
楕円積分は、適当な変数変換により、初等関数と、次の形の不定積分の和となる。これをルジャンドル‐ヤコービの標準形という。ここで
0<k<1, u=sinθ,
x=sin
とする。
第1種楕円積分
第2種楕円積分
第3種楕円積分
第1種の楕円積分の逆関数をヤコービの楕円関数といってsnで表す。すなわち、この積分の値をzとして、x=snzである。snから
を定義する。楕円の周の全長は
となる。この定積分、すなわちE(π/2,k)を第2種完全楕円積分という。同様に、
を第1種完全楕円積分という。楕円積分と同様に、
の形の積分で、Q(x)が五次式、六次式のときを超楕円積分という。これは、アーベル、ヤコービなどによって研究された。すでに述べたように、楕円積分の逆関数を楕円関数という。これは複素平面全体に解析関数として定義を拡張することができて、そのようにしたものは二重周期を有する周期関数であり、有理型関数である。
[竹之内脩]