改訂新版 世界大百科事典 「極大極小」の意味・わかりやすい解説
極大・極小 (きょくだいきょくしょう)
relative maximum, relative minimum
点cを含む一つの集合Eで定義された実数値関数f(x)があるとする。cに十分近いEのすべての点でf(x)≦f(c)となるとき,fはcにおいて極大となる,あるいは極大値f(c)をとるという。cに十分近いEのすべての点でf(x)≧f(c)となるとき,fはcにおいて極小となる,あるいは極小値f(c)をとるという。いいかえるとf(c)が極大値であるというのは,cの近くでだけ(すなわち局所的に)考えたときの最大値であって定義域全体で考えたときの最大値とは限らない。極小値についても同様である。例えば,Eを実数全体とするとき,f(x)=x2についてはf(0)=0は極小値で,同時に最小値でもある。しかし図1で示すようにf(x)=x3-3xについてはf(-1)=2は極大値ではあるが最大値でなく,f(1)=-2は極小値ではあるが最小値でない。極大値と極小値とを総称して極値という。
f(x)が実数のある区間で定義された微分可能な関数であって,cをその区間の内部の1点とする。このとき,(1)fがcにおいて極値をとるならばf′(c)=0である。(2)cに十分近いところでx<cにおいてf′(x)>0で,x>cにおいてf′(x)<0となるなら,f(c)は極大値である。f′(x)に関する不等号の向きがこれと逆の場合はf(c)は極小値である。(3)fが2回微分可能であってf′(c)=0のときは,f″(c)<0ならf(c)は極大値,f″(c)>0ならf(c)は極小値である。なお,(1)の逆は成り立たない。すなわち図2の例のようにf′(c)=0でもf(c)は極値とは限らない。
執筆者:伊藤 清三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報