関数が与えられたとき、1点Pの適当な近傍Vをとると、Vのなかではその関数がPにおいて最大(最小)となっているとき、関数はPにおいて極大(極小)となるといい、そのときの関数値を極大値(極小値)という。極大値、極小値を総称して極値という。
関数が最大あるいは最小になる点が存在するならば、それを関数の全定義域から求めよ、というのは、古来数学における重要な問題であった。しかし、最大・最小という性質が大域的なものであるため、一般的に解を得ることはたいへん困難である。一方、極大・極小という性質は局所的なものであって、極値を与える点は、以下に示すように微分法を用いて探すことができる。これら極値を与える点から最大・最小を与えるものを求める、というのが実用的なやり方である。
[竹之内脩]
関数f(x)がx=x0で微分可能でx=x0で極値をとるならば、f′(x0)=0である。もしf′(x)がx0の左側では正、右側では負であれば、x0はf(x)の極大を与え、左側で負、右側で正ならば極小を与える。またf(x)がx=x0でn回微分可能で、
f′(x0)=0, f″(x0)=0,……,
f(n-1)(x0)=0, f(n)(x0)≠0
のときは、nが偶数ならばx0はf(x)の極値を与える点であり、nが奇数のときはx0はf(x)の極値を与えない。
[竹之内脩]
記述を簡単にするため二変数関数の場合を述べる。f(x, y)がP(x0, y0)で偏微分可能で、fがPで極値をとるならば、fx(x0, y0)=0, fy(x0, y0)=0である(fx、fyはfの偏微分係数)。また、fがPの近傍において2回連続微分可能(fxx、fxy、fyyが存在して連続)で、fx(x0, y0)=0, fy(x0, y0)=0であるとする。
Δ=fxy(x0, y0)2
-fxx(x0, y0)fyy(x0, y0)
なる値の符号によって、Δ<0ならばfはPで極値をとり、Δ>0ならば極値をとらないと判定される。ただしΔ=0であるときは、これだけからはいずれとも判定できない。
∅(x, y)=0という条件のもとでx、yが変化するとき、これらの値をもつ点は一つの曲線を描く。この曲線上での関数f(x, y)の極大・極小を求めるには、一つの定数λを考えて、f(x, y)-λ∅(x, y)という式をつくり、これをx、yに関して偏微分したものをゼロと置いて、すなわち、
fx(x, y)-λ∅x(x, y)=0,
fy(x, y)-λ∅y(x, y)=0
を満たす点(x, y)を極大・極小を与える候補として調べればよい。この方法をラグランジュの未定乗数法という。
[竹之内脩]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…しかし図1で示すようにf(x)=x3-3xについてはf(-1)=2は極大値ではあるが最大値でなく,f(1)=-2は極小値ではあるが最小値でない。極大値と極小値とを総称して極値という。 f(x)が実数のある区間で定義された微分可能な関数であって,cをその区間の内部の1点とする。…
※「極値」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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