極東有事(読み)きょくとうゆうじ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「極東有事」の意味・わかりやすい解説

極東有事
きょくとうゆうじ

日本を含む北東アジア地域における武力紛争のうち、わが国の平和と安全に重大な影響をおよぼす事態。冷戦時代、日本の防衛政策はソ連を事実上の仮想敵国とし、ソ連の武力侵攻に備えるための防衛力整備を行ってきた。だが、1990年代以降はおもに、朝鮮半島台湾海峡での武力衝突が懸念されている。日米安全保障条約では、在日米軍極東有事に対処するために国内の基地を使用することを認めており、また、96年(平成8)4月に合意した日米安保共同宣言では日米防衛協力の強化、推進をうたい、自衛隊の対米支援が重要と位置付けられた。さらに99年5月には周辺事態法(周辺事態に際してわが国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律)が制定され、わが国周辺の地域におけるわが国の平和および安全に重要な影響を与える事態に対応してわが国が実施する措置(後方地域支援、後方地域捜索救助活動など)、その実施の手続きなどが定められた。2003年(平成15)には、武力攻撃事態法の制定、安全保障会議設置法および自衛隊法の改正など、有事関連法の整備が進められた。

[本谷夏樹]

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百科事典マイペディア 「極東有事」の意味・わかりやすい解説

極東有事【きょくとうゆうじ】

日米安全保障条約にいう,極東地域における平和と安全を脅かす事態。同条約第6条では,そうした事態に備えるため日本は米国に基地を提供し,米軍のこの地域での活動を認めている。この場合の〈極東〉の範囲は,1960年の政府見解では〈フィリピン以北ならびに日本およびその周辺の地域で,韓国,台湾地域も含まれる〉とされた。政府は現在のところこの見解を変えていないが,1995年の新防衛計画大綱では〈日本周辺地域〉という表現を用い,また1996年4月の日米安保共同宣言においては〈アジア太平洋地域〉という表現が用いられ,在日米軍の活動範囲が次第に拡大する傾向がある。〈日米防衛協力のための指針〉(1978年)の見直しによって1997年9月に合意をみた新しい〈指針ガイドライン)〉でも,〈日本周辺有事〉における日米防衛協力が前面に出され,1999年ガイドライン関連法の一つとして〈周辺事態法〉が制定されるにいたった。〈周辺事態〉の定義のあいまいさや,どの機関がそれを認定するのかが明らかでないなど,憲法上の問題も含めて,大きな問題をはらんでいる。

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