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歯と歯肉のしくみとはたらき はとしにくのしくみとはたらき

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家庭医学館の解説

はとしにくのしくみとはたらき【歯と歯肉のしくみとはたらき】

 からだの一部としてたいせつな役割をはたしている口は、歯、舌(した)、くちびる、頬(ほお)、のど、あごなど、いろいろな組織から成り立っています。
 そしてこれらは、それぞれの共同作業によって、食べ物を取り入れたり、それを識別したり、味わったり、かみ砕いたり、飲み込んだり、という一連のはたらきをしています。
 また、音やことばを出したり、表情をつくる重要な部分でもあります。そして、口は呼吸とも関係があり、ものをくわえたり、愛情の表現に使われることもあります。
◎歯のしくみとはたらき
◎歯周組織(ししゅうそしき)のしくみとはたらき

◎歯のしくみとはたらき
 人の歯は、上あご(上顎(じょうがく))と下あご(下顎(かがく))を合わせて、乳歯(にゅうし)では20本、永久歯(えいきゅうし)では親しらずを含めて32本あります。
 それぞれの歯には名前がついており、前歯(ぜんし)(切歯(せっし)や犬歯(けんし))は、ものをかみ切るのに都合のよい形をしており、奥歯(おくば)(臼歯(きゅうし))は、ものをすりつぶすのに適した構造となっています(図「歯列(歯ならび)と歯の名称」)。
 歯の上部約半分は歯肉(しにく)(歯ぐき)から出ており、この部分を歯冠(しかん)といいます。残りの歯肉の中に埋め込まれている部分は歯根(しこん)といいます。
 歯の構造は、外から見える歯冠部では、外側からエナメル質(しつ)、象牙質(ぞうげしつ)、歯髄(しずい)と呼ばれる組織があります。また、外から見えない歯根部では、エナメル質ではなく、かわりにセメント質(しつ)という組織が表面にあり、その内側に象牙質、歯髄があります(図「歯と歯周組織」)。
●エナメル質
 歯冠の表面にあるエナメル質は、大部分が無機質(95~97%)でできており、からだのなかでもっとも硬い組織です。無機質はリン酸カルシウムが主体となっています。
 リン酸カルシウムの基本的構造は、結晶学的にはハイドロキシアパタイトです。アパタイトを構成するカルシウムとリンは、地球上に存在する元素のうち、12番目と15番目に多い元素といわれています。
 エナメル質のエナメルとは、陶磁器のうわぐすりの意味で、歯の表面の感じは、陶磁器に似ています。エナメル質に栄養を与えたり養ったりする細胞や血管はありません。しかしエナメル質は、歯が生えてから、唾液(だえき)に含まれるさまざまな成分によって、しだいに硬さを増し強くなっていきます。
 水晶よりも硬いエナメル質は、食物をかみ切ったりかみ砕いたりするのに適していると同時に、その下にある象牙質や歯髄を保護しています。
●象牙質(ぞうげしつ)
 象牙質は歯の大部分を構成している組織で、骨の組織とよく似ており、硬さも似ています。
 象牙質は、歯の硬組織のうちではもっとも厚く、歯冠部の象牙質はエナメル質におおわれ、歯根部はセメント質でおおわれています。
 象牙質の色はやや黄色味がかった白色で、正長石(せいちょうせき)と同じくらいの硬さです。象牙質の組織は、無機質が70%、有機質が18%、水分が12%となっています。無機質はエナメル質と同様にハイドロキシアパタイトの結晶からなっています。
 象牙質の中には象牙細管(ぞうげさいかん)と呼ばれる細い管が通っており、この管の中には象牙芽細胞(ぞうげがさいぼう)(象牙質をつくる細胞)の突起と液体が入っています。歯がしみたり痛んだりする現象は、この象牙細管の中の液体の移動が引き起こすと考えられています。
●歯髄(しずい)
 歯髄は、一般には神経と呼ばれており、歯の治療で「神経を抜く」というときは、この歯髄をとることを意味します。歯髄は象牙質の内側にあるやわらかい組織で、非常に多くの血管や神経が含まれています。そのほか歯髄には象牙芽細胞、歯髄細胞、未分化間葉細胞(みぶんかかんようさいぼう)なども存在します。
 歯髄は、歯に加わるさまざまな刺激に反応します。むし歯や、誤った歯みがきが原因でおこる摩耗症(まもうしょう)(磨耗症)(「摩耗症(磨耗症)」)などで歯が欠けたりすると、歯髄の中の細胞のはたらきによって象牙質がつくられ、歯髄を保護します。
●セメント質(しつ)
 セメント質は、歯根の象牙質の外側をおおっている薄い組織です。硬さは象牙質や骨とほぼ同じで、その組織は無機質65%、有機質23%、水分12%となっています。
 セメント質は、骨のように吸収や添加がくり返しおこることはなく、一生を通じて少しずつ新たに形成されます。

◎歯周組織(ししゅうそしき)のしくみとはたらき
 歯のまわりで歯を支えている組織を歯周組織といい、歯肉(しにく)(歯ぐき)、歯槽骨(しそうこつ)、歯根膜(しこんまく)、セメント質からできています(図「歯と歯周組織」)。
●歯肉(しにく)
 歯肉は、歯のまわりを取り囲む粘膜(ねんまく)のことで、歯を包んでいる骨(歯槽突起(しそうとっき))をおおっています。
 健康な歯肉は、つやのあるきれいなピンク色で引き締まっています。黒ずんだり赤くなったりなど歯肉の色が変わる、あるいは腫(は)れてきたりすると、歯肉に病気のあることが疑われます。
 歯肉のはたらきは、①細菌やその毒素が体内に侵入するのを防ぐ、②歯と歯肉がぴったりと接合する、③ものをかんだときに加わる力から組織を守る、などがあります。
 歯と歯肉の間はぴったりとふさがれているのが正常な状態で、歯と接している歯肉を付着上皮(ふちゃくじょうひ)といいます。
 歯と歯肉のすき間(歯肉溝(しにくこう))からは、実はわずかな量の歯肉溝滲出液(しにくこうしんしゅつえき)が出ています。歯肉溝滲出液は血清成分(けっせいせいぶん)が薄められたもので、好中球(こうちゅうきゅう)や免疫(めんえき)グロブリン(とくにIgG)などが含まれています。これらの成分は、生体防御に重要な役目をしています。歯肉溝滲出液の量は、歯肉や歯周組織の炎症の程度を臨床的に判定するのにも役立ちます。
 一方、歯と歯肉のすき間に侵入した細菌や、細菌によってつくられた毒素もまた、付着上皮の細胞間隙(さいぼうかんげき)を通って簡単に生体内(結合組織)に侵入できます。しかし、歯肉の中に侵入した細菌や毒素は、白血球(はっけっきゅう)(好中球)によって処理されるので、健康な歯肉が保たれているのです。歯をみがかないで歯の表面に歯垢(しこう)(プラーク)をたくさんつけていると、その中の細菌は膨大な数になり、白血球だけでは処理しきれなくなり、炎症がおこってきます。
 歯肉上皮のもう1つの重要なはたらきは、歯との接着です。歯肉上皮がしっかり歯にくっついていなければ、歯と歯肉のすき間には歯垢の中の細菌が入り込み、歯肉にはいつも炎症がおこることになります。健康な歯肉を維持するために、歯肉の付着上皮はしっかりと歯に接着しているのです。
 歯肉上皮のすぐ下には結合組織があり、この組織はおもにコラーゲン線維、線維芽細胞や血管からできています。歯肉結合組織の中のコラーゲン束は歯肉線維(しにくせんい)と呼ばれ、歯肉を歯に固定したり、歯肉の形を保つ役目をしています。
●歯槽骨(しそうこつ)
 あごの骨は、上下それぞれ上顎骨(じょうがくこつ)、下顎骨(かがくこつ)と呼ばれます。上顎骨も下顎骨も、その主体となる骨体部と、歯が植わっている歯槽骨(歯槽突起、歯槽部とも呼ばれる)とに分けられます。歯槽骨は、歯根があごの骨の中に入っている部分のことです。この骨は、歯を支えるという重要なはたらきをもっており、ものをかんだときの力を受け止める役目もしています。
 歯槽骨はからだの他の骨と同様、常に骨吸収と骨添加がくり返されています。これによって骨は、いつも新しいものに置き変わっています(骨のリモデリング)。歯槽骨では、リモデリング率が10~30%と、とくに高いのが特徴です。
●歯根膜(しこんまく)
 歯根膜は、歯の表面にあるセメント質と歯槽骨を結ぶ組織で、幅は0.15~0.38mmと非常に薄いのですが、支持、栄養、恒常性、再生というたいへん重要なはたらきをもっています。
 歯根膜は骨膜(こつまく)と同様、骨やセメント質などの硬い組織をつくります。また、歯根膜組織の中には、非常にたくさんのコラーゲン線維があります。これによって、歯に加わった力を受け止め、まわりの歯槽骨に伝えて力を分散させるわけです。歯根膜のコラーゲン線維は、つくられてから消えてなくなるまでの時間が非常に短いのが特徴です。
 矯正治療(きょうせいちりょう)によって歯が動くのは、歯根膜のコラーゲン線維の代謝が活発であることと関係があります。歯が生えてくるときにも、歯根膜は重要なはたらきをしています。歯周病(ししゅうびょう)(「歯周病(歯槽膿漏)」)の治療によって歯周組織が元にもどるかどうかも、歯根膜の組織にかかっています。最近は、歯の移植・再植なども行なわれるようになってきましたが、この場合も重要なのは歯根膜です。
 歯根膜は、セメント質と同様、哺乳類(ほにゅうるい)にしかみられない組織です。例外的に爬虫類(はちゅうるい)のワニにみられますが、ワニ以外の爬虫類や、さらに下等な動物では歯の象牙質が直接、骨についています。このように歯根膜は、進化した哺乳類にしかみられない組織なのです。
 歯と歯根膜の関係は、歯根膜のコラーゲン線維が歯槽(歯がおさまっている骨の穴)の中で、歯をつっているような状態にあります。食物をかむことによって歯に力が加わると、歯根膜線維は引っ張られ、また多量の水分を含んだ歯根膜中の基質や血管内の血液がクッションの役目をして、歯を歯槽の中に支持することができるのです。
 歯根膜には、直径1~14μm(マイクロメートル)(1μmは1000分の1mm)の神経線維が分布しています。神経のはしには歯根膜受容器があり、歯根膜線維と結合したり直接接触したりしています。歯を動揺させると、歯根膜が圧迫されたり引っ張られたりして、歯根膜受容器を刺激します。歯根膜には、このような固有の感覚機能が備わっているため、比較的大きな力が歯に加わっても対応でき、逆に非常に微細な力が加わっても、これを探知できるのです。これが歯根膜の知覚のはたらきをつかさどっているのです。
 歯根膜中の細胞や骨の表層にある骨芽細胞にとって必要な栄養分は、歯根膜に分布する血管によって供給されています。歯根膜をとってしまうと、その下にある骨芽細胞やセメント芽細胞は死んでしまいます。また、強い矯正力を歯に加えると、歯根膜の血管が圧迫されてふさがり、その血管から栄養分を補給されていた部分の組織が死ぬことになります。
 歯根膜は常に一定の幅を維持するはたらきがあり、これを歯根膜の恒常性といいます。このようなはたらきをするためには、歯根膜に幅センサーが存在し、歯根膜の細胞に、骨やセメント質や歯根膜をつくる能力が備わっていなければなりません。

出典|小学館
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